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Mistral AI

Mistral AI、形式的検証に特化した軽量AIモデル「Leanstral 1.5」をオープンソースで公開

要点

  • Mistral AIは、数学定理の証明やプログラムの正しさの検証に特化した新しいAIモデル「Leanstral 1.5」を発表した。
  • 総パラメータ数1190億のうち動作時には60億のみを使用する軽量設計ながら、難関数学問題やバグ検出で高い性能を示した。
  • 開発には、コンパイラからのフィードバックやファイルの編集操作をリアルタイムに行う2つの強化学習環境が活用されている。
  • ライセンスはApache-2.0で完全にオープンソース化され、Hugging Faceや無料のAPIを通じて誰でも利用可能となっている。

本文

フランスのAI企業Mistral AIのLeanstralチームは2026年7月2日、数学的証明やプログラムコードの正しさを保証する形式的検証(プログラムが仕様通り正しく動くことを数学的に証明する技術)の専用言語「Lean 4」に対応した新しいAIモデル「Leanstral 1.5」を発表した。本モデルはApache-2.0ライセンスのもとで完全にオープンソース化され、Hugging Faceや無料APIを通じて利用可能である。

Leanstral 1.5は、モデルの総パラメータ数が1190億でありながら、動作時に有効化されるパラメータ数はわずか60億という高効率な構成を採用している。この軽量設計ながら、数学およびコード検証のベンチマークにおいて極めて高い成績を収めた。

数学オリンピック級の数学問題を含む「miniF2F」では、検証・テストの双方で100%の正解率を記録し、評価を完全に飽和させた。また、アメリカの難関大学数学コンペの問題を集めた「PutnamBench」では全672問中587問を解決した。さらに、大学院・博士レベルの抽象代数問題を集めた「FATE-H」で87%、「FATE-X」で34%の正解率を達成し、最高水準(SOTA)を記録。実用的なコード検証評価「FLTEval」でも、競合モデル「Opus 4.6」の成績を上回った。

コストパフォーマンスの高さも特徴だ。PutnamBenchの課題解決において、競合の高性能モデル「Seed-Prover 1.5 (high)」が1問あたり約300ドル以上のコスト(10 H20-dayのGPU稼働日数の予算に相当)を要するのに対し、Leanstral 1.5は1問あたり約4ドルで実行可能だという。

Leanstral 1.5の開発は、中間トレーニング、教師あり微調整(SFT)、そして「CISPO」と呼ばれる手法を用いた強化学習(試行錯誤を通じて最適な行動を学習する手法)の3段階で行われた。強化学習においては、以下の2つのシミュレーション環境が活用された。

「マルチターン環境」では、提示された定理を証明または反証する。モデルが生成した証明はコンパイラへ送られ、そのエラーフィードバックを基に、予算が尽きるまでリアルタイムに修正を繰り返す。「コードエージェント環境」では、モデルが開発者のようにファイル編集やコマンド実行を行い、言語サーバーから型情報やエラーを取得して、数百万トークンにおよぶ長い文脈の中で複雑な証明を構築する。結果の正当性は、独自にフォークした検証ツール「SafeVerify」で担保される。

また、Leanstral 1.5は、処理に割り当てるトークン(AIが処理する文字の単位)の予算を増やすほど性能が向上する「テスト時スケーリング」において強力な特性を示す。PutnamBenchにおける検証では、トークン予算を5万から400万へと引き上げることで、解決できた問題数が44問から587問へと滑らかに増加した。途中で諦めず、長時間の思考や修正作業を粘り強く継続できる点が強みだ。

この能力は、実際のプログラムの安全性を検証するケーススタディでも実証された。自己バランス型の二分探索木である「AVL木」の実装において、その時間計算量(処理にかかる時間)がO(log n)であるかどうかの数学的証明に挑戦した。プログラムの計算手順を管理する「TimeMモナド」(プログラムの計算手順や副作用を管理するプログラミング概念)を解きほぐしながら、2.7M(270万)以上のトークンを消費し、22回の文脈圧縮を行いながら、厳密な時間計算量の証明を完了させた。

さらに、実用的なバグ検出能力を検証するため、RustコードをLeanに変換するツール「Aeneas」を組み合わせた自動パイプラインを構築した。Leanstral 1.5がコードから開発者の意図を推論して仕様を生成し、それが満たされているかを自動で検証する。このパイプラインを57個のオープンソースリポジトリに適用したところ、これまで開発者に知られていなかった5つの未知のバグを発見することに成功した。数学の証明だけでなく、現実のソフトウェア開発におけるバグ予防・検出ツールとしても極めて高い実用性を持つことを証明した。

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