Ninth Wave、Amazon Bedrockを活用したオープンファイナンス向けAIオンボーディング支援基盤「Compass」を構築
要点
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米Ninth Waveが、Amazon Bedrock AgentCoreを活用したAIオンボーディングアシスタント「Compass」を構築したことを発表した。
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各金融機関独自のAPIと業界標準規格(FDX)の差異を埋める検証やフィールドマッピング作業を効率化し、従来数週間を要していた接続準備期間の短縮を図る。
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単一エージェントによるRAG構成やEC2でのセルフホスト運用と比較検討した結果、タスクごとに特化したマルチエージェントアーキテクチャを採用した。
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SOC 2やPCI DSSへの準拠、マルチテナント環境におけるデータ分離、監査ログ記録など、金融業界に求められる厳格なセキュリティ・コンプライアンス要件を満たす設計となっている。
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2026年9月14日、米AWSの公式機械学習ブログ(AWS ML Blog)において、金融データ接続プラットフォームを手がける米Ninth Waveが、Amazon Bedrock AgentCoreを活用したAI支援型オンボーディング基盤「Compass」の導入事例を公開した。各金融機関と外部サービスをつなぐAPI統合作業の効率化と、厳格な金融セキュリティ基準の両立を実現したという。
金融機関連携におけるAPI仕様の差異と統合の課題
オープンファイナンス(銀行が顧客の承認を得て標準化API経由で第三者アプリケーションと財務データを共有するネットワーク)への参画にあたり、金融機関は継続的なシステム統合の課題に直面している。
各銀行が公開するAPIは独自のフィールド名やフォーマット規約を採用しており、業界標準であるFDX(Financial Data Exchange:金融データ共有における標準仕様)との間に仕様の乖離が存在する。これら各行のAPIを検証し、標準仕様とのフィールドマッピングを行い、本番接続に向けた準備状況(レディネス)を評価する作業には、従来、メールや表計算シートを介して専門家が数週間にわたる作業を行う必要があった。
Ninth Waveは、金融機関とPlaid、Finicity、MXといったデータアグリゲーターや、Intuit QuickBooks、Xero、Sageなどの会計ソフトウェアとの間で安全なデータ接続を提供するプラットフォームを展開している。各行のAPIをFDX標準に正規化する機能を備えており、金融機関側はNinth Waveに一度統合するだけでオープンファイナンスネットワーク全体への接続が可能となる。同社は今回、この接続作業(オンボーディング)の効率性と応答性をさらに高めるため、AI支援型アシスタント「Compass」を構築した。
AIオンボーディングアシスタント「Compass」と3つの戦略要件
Compassは、銀行のエンジニア、データアグリゲーターの統合担当チーム、そしてNinth Waveのオンボーディング担当者が単一の共有ワークスペースで共同作業を行えるセルフサービスポータルとして設計された。このプロジェクトの推進にあたり、Ninth Waveは以下の3つの戦略的要件を設定したと説明している。
1つ目は「オンボーディング効率の向上」である。API検証やフィールドマッピング、接続準備状況のスコアリングを合理化することで、エンジニアリソースを効率的に活用し、問い合わせ対応を迅速化するとともに、各チーム間で常に一貫した最新情報を共有できる体制を整えた。
2つ目は「外部パートナーへの統制されたAI体験の提供」である。銀行の開発者やフィンテックパートナーに対し、システム統合の意思決定に資する信頼性の高いAIインサイトを提供する一方で、マルチテナント環境における完全なデータ分離、コンテンツ安全性制御、詳細な監査ログの記録といった厳格なデータ統制を維持している。
3つ目は「金融サービスにおけるコンプライアンス基準の維持」である。最小権限アクセスの原則や、保存時および転送時のデータ暗号化を徹底し、SOC 2(内部統制に関する国際基準)およびPCI DSS(クレジットカード業界のセキュリティ基準)の要件に準拠した運用を継続している。
マルチエージェント構成とAmazon Bedrock AgentCoreの採用理由
Ninth Waveはシステムの検討段階において、複数の技術的アプローチを比較評価したという。
まず、Amazon EC2(仮想サーバーを提供するクラウドサービス)上でモデルをセルフホストする手法を検討したものの、システムを完全に制御できる利点がある反面、運用や保守にかかるオーバーヘッドが増大することが懸念された。
次に、単一エージェントによるRAG(検索拡張生成:外部データを検索してプロンプトに組み込む手法)パターンの適用も検証された。構成自体はシンプルであるものの、データマッピング、分析、検索、対話型Q&Aといった多岐にわたるタスクを1つのエージェントで横断的に処理させると、精度の低下が見られたという。
これらの評価を踏まえ、同社はマルチエージェントアーキテクチャの採用を決定した。マルチエージェント構成は初期の設計が複雑になるものの、各エージェントが独立したコンテキストと指示プロンプトを持ち、単一のタスクに集中して処理を行うことができる。これにより、プロンプトの記述スペースが競合することを防ぎ、対応するタスクの種類が増加しても全体の処理精度を拡張・維持することが可能となった。
このマルチエージェントを本番環境でホストしスケーリングするためのマネージド実行基盤として、同社は「Amazon Bedrock AgentCore」を採用した。さらにエージェント開発には「Strands Agents」SDKなどを活用し、銀行独自のデータに基づいた高精度なグラウンディングやタスク別のモデル構成を実現している。
補足
金融機関ごとの独自仕様を共通規格へ正規化するプロセスは、オープンファイナンスの普及における大きな障壁の一つとされてきた。今回の事例は、セキュリティ要件の厳しい金融領域において、タスク特化型のマルチエージェントAIをマネージド基盤上で運用することで、実務プロセスの大幅な省力化を図った取り組みを示している。