Nokia、AI開発基盤「Cursor」で5000万行超のコード解析を2週間で完了 開発工程全体をマルチエージェントで再設計へ
要点
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通信機器大手Nokiaのコアネットワーク部門が、AIコードエディタ「Cursor」を活用し、5000万行を超える大規模コードベースの分析をエンジニア2名・2週間で完了した。
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従来は専用ツール開発と12名以上の専門家による数カ月の作業が必要と見込まれていたアーキテクチャ移行計画を、大幅に工数を圧縮して策定した。
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不具合の根本原因分析を数週間から数日へ短縮したほか、PRD作成から業務管理ツールの構築を1週間足らずで完了させ、調整業務の約80%を自動化した。
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Nokiaは開発者が複数AIエージェントの監督役を担う体制への移行を進めており、要件定義から運用まで開発工程全体を刷新する方針を示している。
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欧州の電気通信大手Nokia(ノキア)が、AI開発プラットフォーム「Cursor」を導入し、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC:企画・設計から実装、保守に至る一連の工程)全体の再設計を進めていることが明らかになった。Cursorの開発元が2026年9月2日に公開した顧客事例記事で発表した。
5000万行超のコード分析をわずか2名・2週間で完遂
NokiaのCore Networks(コアネットワーク)部門は、5Gの音声通話やデータ通信サービスを支えるクラウドネイティブなネットワーク機能を開発している。同部門が扱うシステムは業界の標準規格や規制への厳格な準拠が求められ、稼働率99.999%(いわゆる「ファイブナイン」)の高い信頼性が前提となる環境で運用されている。
同部門では、従来のモノリシック(単一で巨大な構造)なアーキテクチャを解体し、分散型のサービスベースアーキテクチャへ移行するための根拠に基づいた計画策定を進めていた。対象となる製品ラインのコードベースはC言語、C++、Go言語など複数の言語で書かれ、多数のリポジトリに分散する5000万行超の大規模なものだった。当初の計画では、専用のカスタム解析ツールを開発した上で、12名以上の専門家が数カ月を費やす作業になると見込まれていたという。
しかし、2名のエンジニアがCursorを活用して解析を実施したところ、専用ツールを構築することなく2週間で分析を完了させた。分析結果によってシステムの信頼性や顧客への影響が大きい箇所の洞察が得られ、投資対効果(ROI)を見込める移行計画の立案に至った。同部門の試算によると、十数名以上の専門家が数カ月間にわたり拘束される事態を回避でき、他の重要プロジェクトへリソースを充当することが可能になったとしている。
NokiaでCore Networksの製品およびエンジニアリング担当SVP(シニアバイスプレジデント)を務めるカル・デ(Kal De)氏は、「コードベースが抱えていた歴史的な課題に対して、極めて分析的で洞察に満ちた視点が得られた。この計画であれば確実に投資対効果が得られると分かっており、Cursorがなければ実現はおそらく不可能だった」と述べている。
1週間でのツール内製と、障害調査の劇的な高速化
Cursorの活用はコード解析にとどまらず、日常的な開発・運用ワークフローの自動化にも及んでいる。
ネットワーク上への新機能展開では、従来、5Gコア機能の配備に社内複数部門から数十名が参加し、数カ月がかりのプロジェクトとして進行していた。この複雑さを解消するため、1名のエンジニアがCursorを使用し、課題設定から詳細なPRD(製品要求仕様書:開発する機能や要件をまとめた文書)の作成、実稼働するプロジェクト管理ツールの構築までを1週間足らずでやり遂げた。このツールによって、通常6〜10名のプロジェクトマネージャーやプログラムマネージャー間で発生していた調整作業の約80%が自動化・可視化されたという。
また、顧客や通信利用者に影響を及ぼすソフトウェア不具合の調査(トラブルシューティング)においても成果を上げている。従来の原因究明は半手動で行われており、限られた情報をもとに複雑なコードを調査するため、部門横断の会議と数週間の期間を要していた。
現在は、システムエンジニアが環境ログ、過去のチケット、コードベース、デバッグトレースをCursorに読み込ませることで、複数のAIエージェントが並列稼働してホットスポットの候補を特定し、具体的なトリアージ(対応優先順位の判断)手順を提案する仕組みを構築した。他チームとの調整待ちを解消したことで、かつて数週間を要していた根本原因分析(RCA)が数日へと短縮され、修正パッチ適用の迅速化につながっていると説明されている。
SDLC全域へのエージェント展開と今後の展望
Nokiaでは、要件定義や高レベルのアーキテクチャ設計といった開発ライフサイクルの初期フェーズにもCursorの適用範囲を広げている。エンジニアは作業の精度やトークン効率(AIが処理するデータ量の効率)に応じて、最適なモデルを選択して利用しているという。
同社は今後、Cursorの活用をさらに拡大し、複雑な通信ネットワーク内における要件探索支援や、ネットワーク要素の自動カタログ化、接続設定やガバナンスポリシーの自動定義などに活用する計画だ。
デ氏は、エンジニアの役割が「大規模に協調して作業を行う複数エージェントの監督役」へと変化していると指摘しており、構想から製品出荷までの全工程において、業務ごとに特化したAIエージェントが人間の担当者と協調して働く開発体制への刷新を進める意向を示している。