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NVIDIA Technical Blog

NVIDIA、記憶駆動型AIエージェントの構築手法を公開 「NemoClaw」と自己モデルで事実追跡率100%を達成

要点

  • NVIDIAは、日常業務の文脈や意思決定を長期的に蓄積・活用するメモリ駆動型AIエージェントの構築手法を公開した。

  • 人物や優先事項をMarkdownとSQLiteで構造化して記録する「セルフモデル」により、証拠・知識・実行の3層分離を実現している。

  • 「Agent Memory Benchmark」による検証では、変更された事実の追跡率が従来の60.0%から100%へ改善し、全体精度も90.9%に達した。

  • ユーザーの修正履歴から設定ポリシーを更新する仕組みや、「NVIDIA OpenShell」によるサンドボックス化で安全な実行制御を行う。

  • 米NVIDIAは2026年9月4日、同社のAIエージェントフレームワーク「NVIDIA NemoClaw」を活用し、企業の日常業務における文脈や意思決定履歴を長期的に記憶・活用する「メモリ駆動型チーフ・オブ・スタッフ(Chief of Staff)エージェント」の設計手法を公式技術ブログで発表した。単なる会話履歴の保持にとどまらず、構造化された記憶と統制された実行環境を組み合わせることで、実務における判断精度や安全性を大幅に高めるアプローチを提示している。

日常業務の文脈を構造化する「セルフモデル」

企業における日常業務では、メッセージのやり取りや意思決定、プロジェクトの進行状況、各種の義務(タスクや約束事)が時間の経過とともに絶えず変化する。これまでのAIエージェントは、対話の履歴から直近の文脈を把握することはできても、過去の決定事項と一時的な要求が混ざり合い、長期的な文脈を正確に捉え続けることが難しかった。

この課題を解決するため、同社は「セルフモデル(self model)」と呼ばれる構造化されたナレッジ層を導入した。セルフモデルは、業務に関わる人物、プロジェクト、優先事項、目標、概念、繰り返し発生する作業パターンなどの情報を、人間にも読みやすいMarkdown形式のページ群として整理・維持する。スキーマによってインデックス作成や相互参照、情報の出所、データ量の拡張上限が厳密に定義されており、定期的に実行されるスケジュールジョブが新しい活動内容を確認してモデルを更新していく仕組みだという。

証拠・知識・実行を3層に分離する設計

今回のアーキテクチャでは、「証拠(Evidence)」「知識(Knowledge)」「統制された実行(Governed execution)」の3層が明確に分離されている。

セルフモデルが保持するのは元の証拠から導き出された解釈であり、元のデータそのものを置き換えるわけではない。あわせて、タスクや約束事といった義務、優先順位のランキング、ユーザーによる修正記録、監査イベントなどはSQLite台帳(ledger)に記録される。

このように証拠と知識、実行を切り離すことで、エージェントが誤った回答を出した際に、その原因が元の証拠データの不備にあるのか、記憶の維持や検索の失敗にあるのか、あるいはモデル自身の判断ミスにあるのかを開発者が正確に切り分けて特定できるよう配慮されている。

短期的な緊急度より「ユーザーの本来の意図」を重視

実務における優先順位付けにおいては、「インテントゲート(intent gate)」と呼ばれる仕組みが採用された。これにより、短期的な緊急性にとらわれることなく、ユーザーがあらかじめ明示した本来の優先事項に関連する義務を優先してエージェントが処理できるようになる。

さらに、優先順位の階層サイズやデータがあふれた際の挙動、順位付けのルールなどは、確定的なロジックで動作する決定論的コード(deterministic code)によって厳密に制御される。AIモデルの出力の揺らぎに頼らず、ルールに基づいた堅牢な制御を行う設計となっている。

ユーザーの修正を学習し設定ポリシーを更新

エージェントの判断に対する信頼性を高めるため、ユーザーがエージェントの下した判断を修正できる仕組みも組み込まれた。修正の履歴は追記専用(append-only)の監査ログとして記録される。

同様の修正パターンが繰り返された場合には、エージェントが参照する「設定ポリシー(preference policy)」が自動的に更新される。この設定ポリシーは人間が閲覧可能かつ直接編集できる形式で保持されるため、透明性と制御性が保たれるとしている。

ベンチマーク評価で事実追跡率100%を達成

エージェントの記憶性能を測定する「Agent Memory Benchmark」を用いた検証において、セルフモデルを導入した手法は高い性能を示したという。

従来のAgentic RAG(自律的な検索拡張生成)によるベースラインと比較したところ、全体の精度は82.8%から90.9%へと向上した。特に、時間の経過とともに変更された事実を正しく追跡する精度においては、ベースラインの60.0%から100%への大幅な改善を記録したと報告している。

「NVIDIA OpenShell」による安全な実行制御

エージェントが実際の環境でアクションを実行する際のセキュリティ対策として、同社のサンドボックス環境「NVIDIA OpenShell」が活用されている。

OpenShellによってエージェントの動作をサンドボックス(隔離された安全な実行環境)内に制限し、ファイルシステムやプロセス、ネットワークへのアクセスを厳格に制御する。さらに、推論処理や外部ツールと通信するためのMCP(Model Context Protocol:モデルと外部ツールを接続するプロトコル)接続に必要な認証情報はサンドボックスの外部に保持され、安全性が確保されている。

NVIDIAは、今回のメモリ駆動型エージェントの設計レシピや設計提案をGitHubの「nemoclaw-community」リポジトリで公開しており、開発者が独自の事例に適用できるよう情報提供を進めている。

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