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NVIDIA Technical Blog

NVIDIAとApplied Materialsが協業、半導体開発を原子レベルから工場最適化まで高速化するデジタル開発モデルを構築

要点

  • NVIDIAとApplied Materialsは、材料工学から半導体製造までを一貫して支援するエンドツーエンドのデジタル開発モデルを構築した。
  • NVIDIAの各種ライブラリとGPUアクセラレーションの導入により、量子化学の計算を最大55倍、チャンバーシミュレーションを最大35倍に高速化した。
  • 半導体材料の物理シミュレーションプラットフォーム「Ginestra」に「NVIDIA cuDSS」を統合し、CPU単体での処理と比較して最大10倍の計算速度を実現した。
  • この協業により、半導体エンジニアは物理的な実験への依存を減らし、仮想空間上で材料の探索やプロセス開発、工場全体の運用戦略の検証を迅速に行えるようになる。

リード文

米国時間の2026年7月26日、半導体製造装置大手のApplied MaterialsとNVIDIAは、半導体の材料設計から製造プロセスの開発、工場の最適化までをシミュレーション上で一気通貫で行う「エンドツーエンドのデジタル開発モデル」を共同で開発したと発表した。AI(人工知能)向けワークロードの急増に伴う半導体性能の要求値上昇に応えるため、GPUによる高速化技術を半導体製造プロセスの全域に適用する。この取り組みは、従来の物理的実験に頼る開発サイクルの期間とコストを大幅に削減することを目指している。

急増するAI需要と半導体開発の課題

AI処理に伴う演算需要の爆発的な増加により、半導体業界はかつてない高レベルの性能目標を達成する必要に迫られている。急速に変化するAIハードウェアの開発サイクルにおいては、わずかな開発の遅れであっても極めて大きな金銭的損失につながる。同時に、従来のチップ単体の最適化からシステムレベルの設計への移行が進んでおり、これに伴う熱対策や電力管理の課題はさらに複雑化している。

こうした要求を満たすためには、デバイススタックの深部における新たな半導体材料のブレイクスルーが不可欠となっている。しかし、原子レベルでの構造設計や製造プロセスの開発には、従来のシミュレーション手法の限界を超える高度なモデリング技術が求められていた。

3つのステージで構成されるデジタル開発モデル

今回両社が発表した協業モデルは、材料工学におけるApplied Materialsの知見と、NVIDIAのGPU高速化ライブラリ「CUDA-X」を組み合わせることで、半導体イノベーションのサプライチェーン全体を加速させる。このモデルは主に以下の3つのステージで構成されている。

  1. 原子スケールのシミュレーション(材料設計・探索)
    半導体の微細化が進む中、絶縁体(ダイエレクトリクス)や導電体などの薄膜材料の革新が重要になっている。原子スケールでは、材料の微細な構造変化や界面の欠陥がデバイスの性能や歩留まりに直結する。
    Applied Materialsは、物理ベースで欠陥に着目したシミュレーションプラットフォーム「Ginestra」を提供している。同プラットフォームは、次世代の超微細トランジスタである「GAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタ」などに用いられる「高誘電率金属ゲート(HKMG)スタック」の設計に適用されている。GAAトランジスタとは電流が流れるチャネルの周囲全てをゲートで囲む構造を持つデバイスであり、HKMGとは電流のリークを防ぐためにゲートの絶縁膜に高誘電率の素材、電極に金属を用いる技術である。HKMGスタックは、人間の髪の毛の太さの約1万分の1という微細な領域に5種類の異なる材料を積層している。Ginestraは測定データと第一原理計算(実験データなどの外部パラメータを使わず、量子力学の基本原理のみに基づいて物質の性質を計算する手法)を組み合わせ、原子特性からデバイスのばらつきや信頼性を予測する。

  2. チャンバーおよびプロセス開発(物理モデリング)
    製造プロセスの段階では、半導体チップに微細なパターンを刻むための反応室である「チャンバー」のシミュレーションと、その内部で化学反応を起こすための処理条件(プロセスレシピ)の最適化を行う。NVIDIAのGPUによる高速化や物理モデリング技術の導入により、チャンバー内の物理現象をシミュレーションする時間が大幅に短縮される。

  3. 工場(ファブ)のデジタルツイン(全体最適化)
    工場全体の運用段階では、AIを活用した「デジタルツイン」(現実世界の物理的なシステムをデジタル空間上に精密に再現する技術)を構築する。これにより、実際の製造ラインを変更する前に、仮想空間上で工場全体のパフォーマンスや運用戦略をテストし、事前検証を行うことが可能となる。

GPU高速化による圧倒的な計算効率の向上

本協業において、NVIDIAのGPUアクセラレーションを適用した結果、シミュレーション速度が大幅に向上した。

具体的には、密度汎関数理論(DFT)を用いた量子化学の計算において、最大55倍の高速化を達成した。密度汎関数理論(DFT)とは、電子の密度分布から物質の性質や分子の構造を量子力学的に計算する手法である。さらに、半導体製造装置内の物理現象を模擬するチャンバーシミュレーションにかかる時間は最大35倍改善された。

また、前述した材料シミュレーションプラットフォームであるGinestraには、NVIDIAの数理ライブラリ「NVIDIA cuDSS(CUDA-X Direct Sparse Solver)」が統合された。cuDSSは、要素の大部分がゼロである「疎行列」の計算処理をGPUで高速に行うためのソルバーである。これにより、従来のCPUのみを使用するアプローチと比べて、計算精度を維持したまま最大10倍の高速化を実現した。この高速化によって、エンジニアは短時間で何千回もの仮想実験を実行できるようになり、探索できる材料の選択肢が格段に広がった。

物理実験の削減と開発プロセスの迅速化

これらのcuDSS、cuEST、PhysicsNeMo、OmniverseなどのGPUによる高速化や物理モデリング、デジタルツインの統合アプローチは、半導体開発における物理実験への依存度を大幅に減らす。エンジニアは材料の構造特性と最終的なデバイスの性能との関係性を迅速に評価し、最適な製造レシピをデジタル空間で決定した上で、工場全体の運用プランを検証できるようになる。結果として、開発サイクルの反復期間が大幅に短縮され、次世代の高性能半導体の市場投入を加速させることができると説明している。

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