OpenAI、13〜17歳の若者に対する生成AIの影響研究に500万ドルの助成金を発表
要点
-
OpenAIは、13〜17歳の青少年の生活や発達に生成AIが及ぼす影響を調べる独立研究に対し、総額500万ドルの助成枠を設けたと発表した。
-
思春期の感情や社会性の発達、利用パターン、セーフガードの有効性などをテーマとする研究提案を全世界から広く募集する。
-
得られた科学的知見は、若者向けAI製品の開発改善や、政策立案者・規制当局に向けた判断材料として活用される見通しだ。
-
未成年者を対象とする研究のため、倫理審査の実施やプライバシー保護、危害リスクへの対応手順など厳格な安全基準の提示が求められる。
-
米OpenAIは2026年9月8日、13歳から17歳の若者の生活や発達に生成AIがどのような影響を与えているかを解明する独立研究を支援するため、総額500万ドルの助成金プログラムを開始したと発表した。
-
同社は、若者によるAIの利用実態や心理的・社会的な影響に関する科学的根拠(エビデンス)を蓄積し、今後の製品設計や法規制の議論に役立てることを目指している。世界各国の研究者を対象に、オンラインでの提案募集を開始した。
助成プログラムの背景と狙い
OpenAIによると、生成AIは青少年にとって学習や創作、日常的な相談を行う手段として定着しつつあるという。一方で、その影響は一様ではなく、どのような目的でAIを使い、どのように対話しているか、さらには家庭や学校、地域社会、技術提供者からの支援体制といった個別の環境によって大きく異なると説明している。
こうした背景から同プログラムでは、思春期におけるAI利用の機会と課題について、特に感情面や社会性の発達に焦点を当てた独立した調査・研究を支援する。年齢や文脈に応じた影響の違い、セーフガード(有害な出力やリスクを防ぐ安全機能)や介入策の有効性について業界全体の理解を深め、若者向けAI製品の開発基準や規制当局の政策判断に資する強固な証拠基盤を築く狙いがある。
重点的に募集する4つの研究領域
助成の対象として、同社は特に以下の4つのトピックに関連する提案を推奨している。
- 感情面の発達とウェルビーイング:感情の調整能力、回復力(レジリエンス)、自己認識、主体性、自己肯定感、社会的つながりに対する影響の検証。
- 社会性の発達と人間関係:友人や家族との関係性、帰属意識、コミュニケーション能力、共感力、社会的スキルの変化、ならびにAIと人間同士のつながりの関係。
- 属性や環境による利用実態と差異:AIの利用時間や利用目的、年齢、文化、言語、社会経済的な背景によってどのような結果の違いが生じるかの分析。
- リスク緩和策・年齢適性設計・政策的アプローチ:各種セーフガードや製品内の介入措置、AIリテラシー教育、保護者や教育者によるサポート体制、健全な利用習慣の評価。
研究分野としては、児童・青年発達学、心理学、公衆衛生、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)、コミュニケーション学、社会学、人類学、データサイエンス、AIセーフティなどの学際的なアプローチを歓迎するとしている。また、定性・定量・実験・観察・理論・参加型・混合研究法など幅広い研究手法が対象となり、研究の設計や結果の解釈に若者自身を関与させる取り組みも歓迎されるという。提案は全世界から受け付けるが、AIの普及が進んでいる国からの提案が優先される方針だ。
未成年者対象の研究に求められる倫理と安全基準
未成年者を対象とした研究には特段の配慮が必要となるため、応募者には厳格な安全基準の説明が義務付けられている。
具体的には、機関や独立機関による倫理審査のプロセスをはじめ、インフォームド・コンセント(十分な説明を受けた上での同意)や年齢に応じたアセント(子ども自身の賛意)、適切な親の同意取得方法を明記しなければならない。さらに、参加者のプライバシーやデータセキュリティの保護手順、参加者が危害や差し迫ったリスクを告白した場合の対応手順、機密性の高い行動・精神保健情報の取り扱い、研究チームが持つ児童発達や臨床、セーフガーディング(対象者の安全保護)に関する専門性についての説明が求められる。機密情報を収集する研究であっても応募自体は可能だが、追加の倫理審査や専門的対策が必要になる場合があるとしている。
応募要件と審査のポイント
応募書類は英語で作成されたシングルスペースのGoogleドキュメント形式とし、プロジェクト概要(1ページ未満)や研究計画書(3ページ以内)、タイムライン、予算と正当化理由、前提条件とリスク、倫理声明、研究チームの略歴、利害関係の開示などを含める必要がある。なお、申請書類は英語である必要があるものの、研究自体は任意の言語で実施可能とされている。
審査においては、研究デザインの科学的厳密さや公共の議論に対する妥当性、提案の質、製品や規制への適用可能性、倫理・保護の十分性、実現可能性、チームの専門性、包摂性と一般化可能性、OpenAI内部研究との補完性、そしてAI事業者に有利かどうかに左右されない独立性と信頼性が評価される。
特に、ChatGPTを活用する研究や学際的チームによる提案、これまで研究が十分に進んでいなかった集団・地域を対象とするもの、近・中期的な政策や規制の意思決定に直結する明確な証拠を生み出せるプロジェクトなどが優先的に評価される場合があるとしている。