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OpenAI Blog

OpenAI、ゲノム解析とAIで新薬候補を探る研究事例を公開――CodexとChatGPTで抗菌分子の探索を加速

要点

  • OpenAIは、バイオエンジニアのセザール・デ・ラ・フエンテ氏の研究室が、薬剤耐性菌に対抗する新たな抗菌分子の探索にAIを活用している事例を公開した。

  • 薬剤耐性菌による死者は2021年に世界で約500万人に達し、2050年には約2倍になると予測される一方、新たな系統の抗生物質は過去50年間開発されていない。

  • 生命の配列情報を解析する独自の深層学習モデルにより、候補分子の初期探索にかかる期間を数年から数時間に短縮した。

  • 生物学や工学などが混ざる学際チームにおいて、CodexやChatGPTがコード作成や専門用語の整理を担い、異分野間の知識格差を埋めている。

  • 研究室は、AIの予測を実用的な医薬品へつなげるには、実験室での実測検証や安全性試験が不可欠であると強調している。

  • OpenAIは2026年9月10日、バイオエンジニアのセザール・デ・ラ・フエンテ(César de la Fuente)氏の研究チームが、薬剤耐性菌に対する新規抗菌薬候補の探索にCodexやChatGPTを活用している取り組みを発表した。生物学を情報システムとして捉え、現存および絶滅生物のゲノムデータをAIで解析することで、従来は年単位を要していた初期候補の絞り込みを大幅に加速させているという。

50年間新種がない抗生物質と「生命のコード」からの探索

細菌や真菌、ウイルスなどが薬への抵抗力を獲得する薬剤耐性菌(投与された薬剤が効かなくなる微生物)は、世界規模で深刻度を増している。元記事によると、2021年には約500万人の死亡が細菌の薬剤耐性に関連しており、その被害は2050年までにほぼ倍増すると予測されている。しかし、過去50年にわたり新たな系統の抗生物質は登場しておらず、既存薬の改良を中心とした従来の手法では成果が得にくくなっている。

こうした課題に対し、デ・ラ・フエンテ氏の研究室では「生物学は情報システムである」という視点から探索を行っている。DNAを構成するヌクレオチド(遺伝情報の基本単位)や、タンパク質・ペプチド(アミノ酸がつながった分子)を形作るアミノ酸を一種のアルファベットとみなし、生命が機能的な分子を生み出すパターンを解読する手法を開発した。研究チームは現存する生物だけでなく、すでに絶滅した生物のゲノム情報まで対象を広げ、抗菌作用を持つ分子の探索を進めている。

探索期間を「数年から数時間」に短縮、実証実験との連携が鍵

ゲノム情報の中で機能が明確に解明されている領域はごく一部であり、感染症に有効な分子をコードしている部分はさらに限られる。膨大なデジタルデータベースから有望な化合物の兆候を特定する作業は極めて困難だが、大量のデータからパターンを抽出する処理はAIの得意領域とされる。

研究室が開発した独自の深層学習モデルは、生物学的配列のパターンを認識することで、候補分子の初期探索にかかる時間を従来の数年から数時間へと短縮した。

ただし、AIが有望と判断した分子がそのまま医薬品になるわけではない。実際の現場では、標的となる微生物を死滅させられるかの確認や、有効な投与量の特定、ヒト細胞への安全性試験が必要となる。さらに、毒性が出る用量の測定や耐性の獲得しやすさ、体内での動態、安定した製造方法の確立を経て、臨床試験や承認審査を通過しなければならない。デ・ラ・フエンテ氏は、生命現象の理解を深め創薬へつなげるには、AIの予測と実験室での実測検証を両輪で進めることが不可欠であると説明している。

学際チームのギャップを埋めるCodexとChatGPT

デ・ラ・フエンテ研究室は、生物学、化学、計算機科学、工学など多岐にわたる専門家で構成されている。チーム内にはプログラミングが得意でも生物学に詳しくない研究者や、その逆のメンバーが存在する。

研究室では独自のAIモデルに加え、CodexやChatGPTを日常的に活用している。AIを活用することで、生物学者がデータ処理プログラムを作成したり、プログラマーが生物学の課題を理解したりできるようになり、専門領域の壁が下がっているという。具体的には、不慣れな分野の用語確認や手法の比較、アイデアの整理、大規模なゲノムデータのダウンロードや前処理の自動化などに利用されている。また、多国籍なメンバーがそれぞれの母国語で作業を行える点も、作業効率の向上につながっている。

仮説づくりの支援と科学史におけるAIの位置づけ

デ・ラ・フエンテ氏は、ChatGPTを仮説を具体化するためのブレインストーミングパートナーとして位置づけている。研究室の多様なメンバーがアイデアを入力し、多角的な議論を行う場として活用しているという。ただし、AIの出力には常に正確性の確認が必要であるとも注意を促している。

同氏は、研究のブレイクスルーは人があまり足を踏み入れない分野の境界に存在すると指摘し、AIはその境界領域の探索を後押しする存在だと述べている。さらに、望遠鏡が宇宙を照らし、顕微鏡が微小な世界を明らかにしてきた歴史に触れ、AIもまた生命現象を理解・予測・設計するための新たな道具として科学の発展を支えているという見解を示している。

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