OpenAI、企業向けAIエージェントの運用プラットフォーム「OpenAI Presence」を発表
要点
- OpenAIは、企業の顧客対応や内部業務においてAIエージェントを本番運用するためのエンタープライズ向け製品「OpenAI Presence」を発表した。
- 音声およびチャットによるリアルタイムの対話に対応し、業務ルールに沿ったアクションの実行や人間への引き継ぎを制御できる。
- OpenAI自身の電話サポート窓口に導入したところ、問い合わせ全体の75%を人間の介入なしで自動解決するなどの効果を確認した。
- 国内ではソフトバンクが自然な日本語での顧客対応を目的とした実証実験を行うなど、グローバル企業での検証が進んでいる。
- 開発から運用後までの一貫した品質管理に対応し、AIコード生成モデル「Codex」を用いた自動改善ループを組み込んでいる。
米OpenAIは2026年7月22日、企業が顧客対応や社内業務などでAIエージェントを本番運用するためのプラットフォーム「OpenAI Presence」を発表した。同製品は、AIの推論能力と、企業の業務ルールや制限(ガードレール)を組み合わせることで、高価値な業務を安全かつ確実に実行できるように設計されている。すでに音声やチャットでのリアルタイム対話に対応しており、大手企業での実証実験が始まっている。
信頼性と柔軟性を両立するAIエージェントの運用基盤
OpenAIは、企業にとっての課題はもはや「AIエージェントが動作するか」ではなく、「本番環境で高い信頼性を持って業務をこなせるか」に移っていると指摘する。製品や社内ポリシー、顧客の行動変化に合わせてAIエージェントを柔軟に適応させるためには、単一のモデルを提供するだけでなく、総合的なシステム評価と導入支援の知見が必要であると説明している。
新しく登場した「OpenAI Presence」は、顧客からの質問への回答やトラブルの解決、社内システムの使用、承認された手続きの実行に加え、必要な場合に人間のスタッフへ対応を引き継ぐ(エスカレーション)機能を備える。
各エージェントには、請求問題の解決、保険請求のサポート、従業員向けのITサポートといった特定の役割に応じた知識とシステムアクセス権限のみが与えられる。企業側は、エージェントが実行可能なアクションの範囲や、人間の承認を求めるタイミング、人間の担当者に引き継ぐべき基準などのポリシーを細かく設定できる。
本番運用を支える品質評価と「Codex」による自動改善
Presenceには、企業の標準作業手順書(SOP)やポリシー、ガードレール、承認アクション、シミュレーション、評価ツール、そしてAIコード生成モデルである「Codex(コーデックス)」を用いた改善プロセスといった、本番運用に必要な構成要素が統合されている。
運用前の段階では、一般的な問い合わせからエッジケース(発生頻度が低い例外的な事例)、高リスクなシナリオまでを用いてエージェントの挙動をテストできる。シミュレーションと評価システムが、正しい結果に到達したか、ポリシーに従っているか、適切なエスカレーションが行われたかなどを判定する。また、対話内容が企業の許容範囲から逸脱しそうになった場合には、ガードレール機能が介入して対話をコントロールする。
この品質管理プロセスは、サービス稼働後も継続される。実際の対話データや人間への引き継ぎシグナルから、エージェントの課題が特定されると、Codexが専用のプラグインを用いてそれらのデータを分析し、エージェントをアップデートするための修正案を自動で提示する。運用チームは、本番環境のバージョンと修正案をテスト環境で比較した上で、承認した修正のみを段階的に反映させることができる。
OpenAI自身のサポート窓口では75%の自動解決を達成
OpenAIは、Presenceの信頼性を自社の英語電話サポート窓口(1-888-GPT-0090)への導入を通じて実証している。この窓口では、顧客の本人確認からアカウント情報の確認、承認されたアクションの実行までをエージェントが一貫して処理する。
導入から数週間で、人間のサポート品質基準と同等以上の評価を獲得し、現在では電話によるインバウンド問い合わせの75%を人間の手を借りずに解決しているという。また、Codexを用いた改善ループの導入により、人間へ対応を引き継ぐ割合がわずか10日間で15パーセントポイント減少した実績を明らかにしている。
国内外の大手企業がテスト運用をスタート
すでにグローバル企業の導入事例や実証実験が進められている。
日本のソフトバンクは、自然な日本語での顧客対応を目的とした実証実験を行っている。同社バイスプレジデントでデータ&デジタル変革本部長を務める村上唯久氏は、「フロントラインのチームから、日本語での会話の自然さと正確性が高く評価されている」と述べ、PresenceがSoftBankを代表して一貫したサービスを提供できる可能性を検証している。
また、スペイン大手のBBVA銀行は、メキシコにおいて日常的な銀行取引をサポートするAI音声対応の検証を進めている。BBVAメキシコの Daniel Ordaz 氏は、「Presenceのデザインパートナーとして、より迅速でパーソナライズされた顧客サービスの提供を目指し、音声体験の洗練に取り組んでいる」とコメントした。
オーストラリアの保険大手IAGは、災害や悪天候といった問い合わせが急増する局面に焦点を当てている。同社リテールインシュアランスCEOの Julie Batch 氏は、「悪天候などの緊急時に、信頼できるエージェントを通じて保険金請求のプロセスを迅速に案内し、顧客が必要とする支援を確実に届けたい」と、その狙いを語っている。
導入から拡張までのサポート体制
OpenAIは、Presenceの導入に際して顧客企業と緊密に連携し、価値の高いワークフローの特定からシステム接続、権限とポリシーの設定、テスト、そして本番ローンチまでを共同で行う。また、運用の拡大段階においては、OpenAIだけでなく特定のシステムインテグレーター(システム構築事業者)もサポートを提供する。
さらに、現在の標準的な仕様を超えるような複雑なユースケースに対しても、OpenAIのFDE(顧客の業務環境に直接入り込んでシステム開発を支援するエンジニア)やパートナー企業が協力し、本番環境への移行を支援する体制を整えていると説明している。