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The Hacker News

OpenAI、ロシア発の世論誘導工作に関与したChatGPTアカウント群を凍結 架空シンクタンクと独自指数による権威偽装の手口が判明

要点

  • OpenAIは、アクセス制限をVPNで回避して世論誘導を行っていたロシア関連のChatGPTアカウント群を停止した。

  • これらのアカウントは、イスラエル拠点を自称する組織「国際バーク研究所(IBI)」を宣伝するためのSNS投稿やコメントを生成していた。

  • IBIのウェブサイトでは、盗用された学術論文や、ロシアを高く評価する独自の「主権指数」を用いて信頼性の偽装が図られていた。

  • 生成されたコンテンツの大半は英語で、ChatGPTに対してロシア発であることを示す言語的特徴を消すよう指示が出されていた。

  • OpenAIは、AIが悪用されて権威捏造の道具となる一方で、その利用履歴が工作全体の露呈につながったと指摘している。

  • 米OpenAIは2026年8月26日までに、同社の対話型AI「ChatGPT」を悪用して世論誘導工作(インフルエンス・オペレーション)を展開していたロシア関連のアカウント群を特定し、利用を停止したことを明らかにした。

  • これらのアカウントはVPN(インターネット上で通信を暗号化し、接続元を偽装・保護する技術)を利用してアクセス制限を回避し、複数の主要ソーシャルメディアに向けて投稿やコメントを生成・拡散していたという。

  • 調査の結果、単なるSNS投稿の生成にとどまらず、架空のシンクタンクや独自の評価指数を組み合わせて信頼性を偽装する、組織的なインフラの存在が浮き彫りとなった。

AIを利用したSNS投稿の生成とロシア発の痕跡隠蔽

OpenAIの発表によると、停止されたアカウント群はChatGPTを利用してソーシャルメディア向けの投稿やコメントを作成していた。主な配信先にはSubstack、Telegram、X(旧Twitter)、Facebook、LinkedInが含まれていたという。

工作による影響範囲について、OpenAIはオーディエンスの規模は比較的小さかったと評価している。最も多くのユーザーを集めたTelegramチャンネルでも、フォロワー数はそれぞれ1万〜2万人規模にとどまっていた。

生成されたコンテンツの大半は英語で書かれていた。オペレーターはChatGPTに対し、作成者がロシア出身であることを推測させるような言語的な手がかり(スラヴ語話者特有の表現など)を一切残さないよう指示を与えていたとされる。

架空のシンクタンク「IBI」と学術論文の不正流用

今回のアカウント群は、「国際バーク研究所(International Burke Institute:IBI)」と呼ばれる組織の宣伝を主な目的として運用されていた。IBIはイスラエルに拠点を置く専門家コミュニティを自称し、経済、政治、社会学、国際関係の分野における世界有数の専門家が集う組織であると主張していた。

この組織に関連するウェブサイト(ibi[.]institute)は2025年2月に登録されたものである。サイト上に掲載されている論考自体がChatGPTで直接作成された証拠は見つかっていない。しかし、掲載記事の多くは既存の学術論文から無断で転載されたり、誤った著者名が割り当てられたりしていたほか、スラヴ語話者が作成した下書きを機械翻訳したとみられる文章が含まれていたという。

ロシアを好意的に描く「主権指数(バーク指数)」の仕組み

OpenAIは、今回の工作が過去に確認されたロシア関連の世論誘導と大きく異なる点として、独自の「主権指数(Sovereignty Index、別名バーク指数)」を策定・宣伝していたことを挙げている。この指数は、ロシアを肯定的に見せる一方で西側諸国を批判するために利用されていた。

サイト側の説明によると、主権指数は政治、経済、技術、情報、文化、認知、軍事という7つの領域を対象に算出される。各領域は公式の国家データや世界統計、専門家の評価に基づいて最大100点で評価され、それらを合算した100点から700点の範囲で「総合主権指数」が決定される仕組みとなっていた。

IBIのウェブサイトで公開されていた国別レポートでは、主要国のスコアが以下のように算出されていた。

  • 米国:650.9点(首位)
  • 中国:649.1点
  • スイス:610.7点
  • ロシア:601.4点(4位)

ロシアに関する評価レポートでは、同国を「2025年時点で高度な主権と、記録的な軍事・経済的自給自足を誇る国家」と記述している。民間経済の柔軟性の低さや内部の行政資本への依存といった課題を挙げつつも、「完全なデジタル主権と軍事核主権を保持する世界3大国の1つ」と位置づけ、強固な体制をアピールする内容となっていた。

画像生成や活動要約など多岐にわたるAI利用

アカウントの活動は、IBIに関するテキスト生成だけにとどまらなかった。オペレーターの1人は、「American Observer」という名称のTelegramチャンネル用プロフィール画像をChatGPTに生成させていたほか、同チャンネルの活動状況に関するロシア語の要約を繰り返し要求していたことが確認されている。

権威偽装のツールとしてのAIと工作発覚の経緯

OpenAIは、今回確認された作戦について、到達した読者数の多さよりも「構築されたインフラそのもの」に注目すべき点があると分析している。

工作員らは単独の宣伝投稿を作成するためにChatGPTを利用していたが、それらの投稿は、架空の専門家や盗用された学術論文、独自のリスク指数を備えた「一見すると信頼できそうな組織」へと誘導する役割を果たしていた。

同社は、影響力を行使しようとする攻撃者が、権威を捏造し、特定の論調の発信元を曖昧にし、時間をかけて拡張可能な資産を築くための補助ツールとしてAIをどのように悪用し得るかを示していると指摘した。同時に、AIを補助的に利用した痕跡そのものが、結果として背後にある大規模な工作活動全体を暴くきっかけになったとも総括している。

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