OpenAIが「GPT-5.5 Instant」を発表、事実性の向上と無駄のない簡潔な回答を実現
要点
- 米OpenAIは2026年5月5日、ChatGPTのデフォルトモデルを「GPT-5.5 Instant」にアップデートした。
- 新モデルは事実性が大幅に向上し、特に医療や法律、金融といった重要分野におけるハルシネーションが前モデル比で52.5%減少した。
- 画像解析やSTEM分野の回答、ウェブ検索の実行判断など、日常的なタスクの処理能力も強化されている。
- 回答の無駄な冗長性を排除し、ユーザーに合わせたパーソナライズ機能の改善も順次ロールアウトされる。
リード
米OpenAIは2026年5月5日、同社が提供するAIチャットサービス「ChatGPT」のデフォルトモデルを、よりスマートで正確になった「GPT-5.5 Instant」へアップデートしたと発表した。本アップデートにより、何億人ものユーザーが日常的に利用する同モデルの回答精度が向上し、より簡潔でユーザーに合わせた回答が可能になったという。また、同年6月9日の更新情報では、無料プランや「ChatGPT Go」のユーザーに対してもパーソナライズ機能(ユーザー個人に合わせて出力を調整する機能)の改善が順次適用されることが明らかになっている。
本文
事実性の向上とハルシネーションの低減
新型モデル「GPT-5.5 Instant」では、日常的なやり取りをより実用的で楽しいものにするため、様々な改善が施されている。特に注力されたのが、回答の信頼性を左右する事実性(ファクチュアリティ)の向上である。
OpenAIの内部評価によると、高度な正確性が求められる医療、法律、金融といった分野のプロンプト(AIへの指示文)において、GPT-5.5 Instantは前モデルである「GPT-5.3 Instant」と比較して、ハルシネーション(AIが事実に基づかない、もっともらしい嘘を出力する現象)を起こす割合が52.5%減少した。さらに、過去にユーザーから事実誤認の指摘があった難易度の高い会話においても、不正確な主張が37.3%減少したという。
また、画像や写真の解析能力、STEM(科学・技術・工学・数学の教育分野)関連の質問への回答力、ウェブ検索をいつ使用すべきかを判断する自律的な処理能力など、日常のあらゆるタスクにおける基本性能も底上げされている。
数学問題における思考プロセスの進化
OpenAIは、モデルの思考能力の向上を示す具体例として、代数の問題を解くプロセスを挙げている。
例えば、 $\sqrt{x+7} = x-1$ という方程式を解く際、前モデルのGPT-5.3 Instantは、計算過程で代入確認を行った段階で矛盾に気づいたものの、そこで思考を停止し「実数解なし」という誤った最終結論を出力してしまっていた。
これに対し、新しいGPT-5.5 Instantは、一時的に誤った解を支持したとしても、代入による検証ステップでその誤りに自ら気づくことができる。さらに、ユーザーが提示した計算過程に遡って「式の展開時に移行のミスがあり、正しくは $x^2 - 3x - 6 = 0$ という二次方程式になる」という原因を特定する。その上で、二次方程式の解の公式(二次方程式の解を求めるための数式)を正しく適用し、 $\frac{3 + \sqrt{33}}{2}$ という正しい解を導き出すことに成功している。このリカバリー能力の差が、視覚的推論や数学、科学といった各種評価指標におけるスコア向上に結びついているという。
冗長さを排した簡潔な回答スタイル
さらに、GPT-5.5 Instantでは、回答の温かみやキャラクター性を維持しつつも、冗長で過剰な装飾を省いた「簡潔で的を射た回答」を行うよう調整されている。不要な問いかけを減らし、過剰な絵文字の使用を避けることで、画面上のノイズを最小限に抑える仕様となった。
この回答スタイルの変化は、同僚への中断依頼の仕方を尋ねる会話例にも顕著に現れている。GPT-5.3 Instantは、複数の対話テクニックや状況に応じたアドバイスを長々と箇条書きで提案し、最後に同僚の性格を尋ねる追加の質問を行っていた。
一方で、GPT-5.5 Instantは「職場での敵を作りたくないのであれば『喋るのをやめて』とは言わない方がいいでしょう」と簡潔に前置きした上で、より要点を絞った実用的な表現をスマートに提示する。情報の質を落とすことなく、応答のテキスト量を最適化することで、ユーザーの生産性を支援する形となっている。
パーソナライズ機能の展開
今回のアップデートでは、ユーザーがこれまでに共有した文脈(コンテキスト)を活かしたパーソナライズ機能も強化されている。
2026年6月9日の更新によると、このパーソナライズ機能の改善は「ChatGPT Go」および無料プランのユーザーに対しても現在ロールアウト中である。なお、無料プランにおけるパーソナライズは、過去のチャット履歴から参照するデータ範囲が一部制限された縮小版として動作するとしている。