欧州委員会、Googleに対しAndroidのカメラやマイクなどを競合AIアシスタントへ開放するよう命令
要点
-
欧州委員会は、Googleに対し、自社の「Gemini」と同等のAndroid OS機能へのアクセス権を競合AIアシスタントに提供するよう命じた。
-
開放が求められる機能には、カメラやマイクの継続的な利用、画面情報、消灯時の起動ワード、バックグラウンドでの操作実行などが含まれる。
-
Googleは次期メジャーOSである「Android 18」でこの仕様を実装し、遅くとも2027年8月1日までに提供する必要がある。
-
デジタル市場法(DMA)に基づく決定として、Googleは検索・クリック・ランキングデータも競合の検索エンジンやAIに実費相当の料金で共有しなければならない。
-
対象機能のうち5つはGoogleが事前認証を求めることができるが、常時稼働マイクや画面情報など6つの機能は認証なしで無条件に開放される。
-
欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会は2026年7月16日、デジタル市場法(DMA:デジタル市場における公正な競争を促進するためにEUが導入した法規制)に基づき、Googleに対してAndroid OSの主要な機能を競合するAIアシスタントに開放するよう命じる決定を下した。この決定により、Googleの独自AI「Gemini(ジェミニ)」にのみ許可されていたカメラ、マイク、画面情報へのアクセスや、バックグラウンドでの他アプリの操作権限が、他社製のAIアシスタントにも同様に提供されることになる。Googleは遅くとも2027年8月1日までに、次期メジャーアップデート版となる「Android 18」でこの仕様を実装しなければならない。
-
今回の命令は、欧州委員会が2026年1月27日に調査手続きを開始してから6ヶ月後に採択された、2つの拘束力のある仕様決定のうちの1つである。もう一つの決定では、Googleの検索エンジンが収集した匿名化済みの検索クエリ、クリック、ランキングのデータを、競合の検索エンジンや検索機能を持つAIチャットボットに対し、コストベース(実費相当)の手数料で提供することが義務付けられた。いずれの決定も「罰金」を伴うものではないが、仕様決定手続きはゲートキーパー(市場で圧倒的なシェアを持つ巨大IT企業)に対して構築すべき内容を指示するものであり、欧州委員会が将来的に不遵守を理由に罰金を科すための別の手続きを行う権限は維持される。現在、Androidは欧州のモバイルユーザーの約60%のシェアを占めており、今回の決定が市場に与える影響は大きいとみられる。
-
Androidに関する仕様決定は、合計11のOS機能に及ぶ。そのうち5つの機能について、Googleはアプリがアクセスする前に事前認証(セキュリティや意図の確認などに関するチェック)を求める権利が認められており、これらは「制限機能」と呼ばれる。制限機能には、アプリが共有にオプトイン(同意)したデバイス上のデータに一元アクセスする「AppSearch(アップサーチ:デバイス内のデータをインデックス化し高速に検索するシステム)」や、先見的な提案の背後にある「Magic Cue(マジックキュー:ユーザーの文脈に合わせて次の操作を先回りして提案する機能)」のような常時オンのコンテキスト認識インテリジェンスが含まれる。さらに、App Actions(アップアクションズ)やApp Functions(アップファンクションズ)と呼ばれる構造化されたデバイス上の統合、画面の自動化機能である「Computer Control(コンピューターコントロール:画面の認識やタッチ・入力をプログラムから自動で実行する機能)」、そして設定やメディア、スクリーンショット、通知、電源管理などのシステム統合がこの制限機能に分類されている。
-
事前認証を得たAIアシスタントは、Google製アプリと密接に連携することが可能になる。具体的には、Gmailの取得や下書き作成、Googleカレンダーの予定管理、Googleドライブやドキュメントからのコンテンツ抽出、Googleマップのルート案内起動、YouTubeの再生制御や視聴履歴の確認、メッセージアプリでのSMS/MMS/RCSの読み書き、そして電話の発信を直接実行できるようになる。
-
一方で、残りの6つの機能については、Googleは事前認証を求めてはならず、すべてのサードパーティに無条件で開放しなければならないと規定された。これにはユーザーが自身でインストールしたアプリも含まれる。開放される機能には、マイク入力、システムオーディオ、カメラ、画面コンテンツ、位置情報、加速度センサーなどの「環境データ」へのバックグラウンドでの継続的なアクセスが含まれる。また、画面消灯時やバッテリーセーバー稼働時でもAIを起動させる「常時オンのホットワード検出」や、長押しによる起動、システムレベルのデバイス上モデル、サードパーティ製モデルの実装、およびバックグラウンド実行が対象となっている。
-
環境データについては、Googleの自社AIと同等の簡易的な同意プロンプト(ユーザーへの確認画面)で取得できる。従来のAndroidでは、自社サービスは簡易的なプロセスでセンサーデータにアクセスできたのに対し、サードパーティ製アプリは実行ごとにユーザーの同意を求める必要があったが、これが是正される。また、常時オンのホットワード検出は、低電力の「DSP(デジタルシグナルプロセッサ:音声などの処理に特化した計算処理装置)」を搭載したデバイスで利用可能で、ユーザーが操作を終えるまで録音を続けられる。なお、複数のAIアシスタントが同時に音声を聴き取る機能の実装については、スケジュールが緩和され、Android 19(2028年8月1日まで)に延期された。
-
Googleはこれらの機能について、プロセス隔離やデータ暗号化を義務付けることは可能だが、アクセス許可の可否を自ら判断することはできない。もしGoogleが生データの利用を制限したい場合は、合理的な理由を示した要求を欧州委員会に提出し、その機能を「制限機能」へ移行させる許可を得る必要がある。
-
事前認証が必要な5つの制限機能のために、Googleは「適格AIアシスタントプログラム」という仕組みを構築しなければならない。Googleは、独立したサードパーティである「TCA(信頼できる認証機関:セキュリティや信頼性を第三者的な立場から検査・証明する独立組織)」がAIアシスタントを無償で認証できるようにし、その認証を無条件で受け入れ、一度付与した認証を一方的に取り消してはならない。
-
GoogleはTCAプログラムの条件を策定し、どの組織を認証機関として承認するかを決定するが、その条件は合理的かつ非差別的でなければならない。また、条件の変更には2ヶ月前に欧州委員会に事前通知して承認を得る必要がある。GoogleはTCAが下した個々のAIアシスタントへの認証を取り消すことはできないが、ルールに違反したTCA自体の承認を取り消すことはできる。認証基準には上限が定められており、Googleは「アシスタントが個人情報の送信や取り消し不能なアクションを実行する前にユーザーの意図を再確認するかどうか」や「意図しないデータ漏洩を最小限に抑えているか」といった点についてテストすることのみが許される。