OWN NEWS GATHER
← 戻る
Preferred Networks Tech Blog

Preferred Networks、材料探索AI「Matlantis PFP v9.0.0」を発表 96元素に対応し公開ベンチマークで首位

要点

  • Preferred Networksは、クラウド型材料探索プラットフォーム「Matlantis」の基盤AIモデル最新版「Matlantis PFP v9.0.0」をリリースした。

  • 高精度なr2SCAN汎関数モードの対応元素を拡張し、ランタノイドやアクチノイドを含む96元素(水素からキュリウムまで)のシミュレーションに対応した。

  • 触媒や電池開発などの実応用を見据え、結晶だけでなく表面構造や吸着状態、金属錯体など多様な原子配置を学習データに追加した。

  • 公開ベンチマーク「MLIP Arena」の総合評価でMACE-MPAと並び同率1位を獲得し、モデル間の直接比較では全モデル中で最多のタスク優位を記録した。

  • 株式会社Preferred Networks(PFN)は2026年8月17日、クラウド型材料探索プラットフォーム「Matlantis」の中核技術である機械学習原子間ポテンシャルの最新バージョン「Matlantis PFP v9.0.0」を公開した。

  • 今回のアップデートでは、対応元素数が従来の70から96へと大幅に拡張されたほか、実際の材料開発で頻出する複雑な原子構造を学習データに反映させたという。あわせて実施された国際的な公開ベンチマーク「MLIP Arena」の検証では、総合ランキングで首位タイのスコアを獲得したことが明らかになった。

対応元素を96種へ拡充、アクチノイド系列まで網羅

Matlantis PFPは、原子間に働く力やエネルギーを機械学習によって高速に予測する「機械学習原子間ポテンシャル(MLIP)」技術である。2021年7月のMatlantis提供開始以来、適用範囲と精度の向上を目的に継続的な改良が行われてきた。

PFP v9.0.0では、実験値や高精度な参照値との一致度を高める「r2SCAN汎関数モード(密度汎関数理論における高精度な計算手法)」の対応元素が大幅に拡大された。前バージョンであるv8.0.0の70元素から、新たにランタノイド系列およびアクチノイド系列が加わり、水素(H)からキュリウム(Cm)までの全96元素をサポートする。これにより、一般的な有機・無機材料に加え、レアアースや放射性元素を含む高度な材料系においても高精度なシミュレーションが可能になったとしている。

表面や錯体など「実応用で現れる構造」の学習データを強化

材料シミュレーションの実務現場では、理想的なバルク結晶構造だけでなく、触媒や電池、合金、多孔性材料などで見られる表面、界面、吸着種、ナノクラスターといった非バルク環境を扱う場面が多い。

PFP v9.0.0では、従来の結晶や分子データに加え、これらの表面構造、吸着構造、クラスター、金属錯体といった多様な原子配置を学習データに積極的に組み込んでいる。これにより、実際の材料開発で直面する多様な化学的・構造的環境下でも信頼性の高い予測を行えるよう設計されているという。前バージョンのv8.0.0と比較した場合、生成エネルギーや状態図の予測精度を維持しつつ、融点、表面エネルギー、分子ベンチマーク「GMTKN55」における評価結果で改善が確認されたとしている。

公開ベンチマーク「MLIP Arena」で総合首位タイを達成

今回の発表では、外部の公開ベンチマークにおける客観的な立ち位置を示すため、主要な評価基盤である「MLIP Arena」を用いたPFP v9(標準的な計算設定であるPBEモード)の検証結果も公表された。

MLIP Arenaは、エネルギーや力の静的な予測誤差にとどまらず、実用的なシミュレーション条件下でモデルが物理的に妥当な挙動を再現できるかを評価するオープンなベンチマークプラットフォームである。同ベンチマークの規定に従い、同核二原子分子、状態方程式、エネルギー・体積スキャン、安定性、燃焼の5つのタスクで性能比較が行われた。

検証の結果、PFP v9は総合ランキングにおいて有力モデル「MACE-MPA」と並ぶ同率1位を記録した(PFP v9以外のモデルは2026年3月1日時点の公開リーダーボードに基づく)。さらに、モデル同士を1対1で突き合わせる直接比較(ペアワイズ比較)においては、全5タスクのうち3タスクでPFP v9が1位を獲得した。これにより、MACE-MPAを含む参加モデル全体との直接対決において過半数のタスクで優位となり、直接比較の評価でPFP v9を上回るモデルが存在しないことが示されたとしている。

実用性重視の社内ベンチマーク整備と今後の展望

PFNは今後の展望として、汎用MLIPの実用化が進むにつれてモデルの評価軸そのものを深化させる必要があると言及している。従来の静的な回帰精度にとどまらず、長時間の分子動力学(MD)シミュレーションにおける安定性やマクロな実験値との一致といった、より応用に直結した指標が求められているという。

こうした背景から、PFNは以下の6項目を柱とする社内ベンチマーク環境の整備を進めていることを明らかにした。

  • 一点計算のみならず長時間シミュレーションを含む実用タスクでの挙動評価
  • 反応エネルギーや欠陥形成エネルギーなど実際の現象を左右する物性の評価
  • 特定の計算手法(DFT汎関数)への過度な最適化を避け、実験値との比較を重視した指標設計
  • 多様な材料にわたる重要なシミュレーションケースの網羅
  • シミュレーションの安定性や予期しない異常挙動の検出
  • 現行の汎用MLIPでは正確な評価が難しい難関ケースの積極的な導入

これらの評価環境は現時点では社内向けに整備されているが、準備が整ったものから順次コミュニティ向けに公開していく予定と説明している。

元URL