侵害されたサービスプリンシパル悪用でAzureリソースを削除、攻撃グループ「JADEPUFFER」の新たな手口が判明
要点
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攻撃グループ「JADEPUFFER(Microsoftの追跡名:Storm-3168)」が、侵害されたサービスプリンシパルを悪用してMicrosoft Azure環境のリソースを大規模に削除・破壊したことが判明した。
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攻撃は2026年6月初旬に約18時間にわたって実行され、事前のリソース探索を経てストレージアカウントやKey Vault、SQLデータベースなどの削除が試みられた。
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100件以上のストレージアカウント削除が試みられて大半が削除された一方、リソースロックなどの保護機能により一部は削除を免れた。
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Azure SQLデータベースに対する削除試行は、指定されたAPIバージョンが非対応だったため失敗に終わった。
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JADEPUFFERは過去に大規模言語モデル(LLM)を活用した自律型ランサムウェア攻撃で報告されたグループであり、クラウド環境における手口の進化が確認された。
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2026年6月初旬、Microsoft Azure環境において、侵害されたサービスプリンシパルが悪用され、クラウド上の各種リソースが破壊されるインシデントが発生した。Microsoftのセキュリティ研究チームが公表した調査結果により明らかになった。Microsoftはこの攻撃活動を「Storm-3168」という呼称で追跡しており、自律型AIを活用した攻撃で知られる脅威グループ「JADEPUFFER」による手口の進化であると説明している。
2つの認証情報を使い分けた探索活動
Microsoftの分析によると、今回のインシデントは約18時間の間に展開された。攻撃者は同一のAzureテナントに紐付く2つの侵害されたサービスプリンシパル(アプリケーションや自動処理にアクセス権を付与する認証ID)を使い分けて侵入していた。サービスプリンシパルの認証情報が侵害された直接の経緯は確定していないものの、被害組織の従業員が過去に公開GitHubのIssue上にクライアントIDやシークレット、テナントIDを平文で投稿していた履歴が確認されている。該当のシークレットは後に削除されていたが、関連情報が攻撃に利用された可能性があるという。
攻撃者は1つ目のサービスプリンシパルを主に偵察活動に使用していた。約16時間にわたり、Azure Virtual Machines(仮想マシン)、サブスクリプション、リソースグループなどを対象に300回以上の読み取り操作を実行し、環境内の構成を調査した。その約90分後には2つ目のサービスプリンシパルも探索に投入され、わずか5秒の間に2つのサブスクリプションにまたがる仮想マシンとリソースグループを列挙した。さらに初期の探索から16時間後、2つ目のサービスプリンシパルはAzure App Serviceの設定ストアを列挙し、平文で保存された認証情報の探索を試みたという。
7分間に集中した破壊活動と保護機能による防御
一連の探索を経た後、2つ目のサービスプリンシパルによって35分間に150回以上の破壊的および認証情報収集の操作が実行された。特に破壊シーケンスはわずか約7分間に集中して行われたという。
この短時間の間に、100件を超えるAzure Storage Accounts(ストレージアカウント)に対する削除試行が行われ、その大半が実際に削除された。また、Azure Key Vault、Function App、App Serviceプラン、および複数のAzure SQLデータベースも標的となった。しかし、Azure SQLデータベースに対する削除試行は、攻撃者が指定したAPIのバージョンが当該リソースタイプでサポートされていなかったため、すべて失敗に終わった。
さらに、標的となったストレージアカウントのうち一部は、Azureのリソースロック(誤削除や不正な変更を防ぐ保護設定)やアカウントレベルの削除保護機能が有効化されていたため、削除がブロックされた。Microsoftは、管理者権限を持つ認証情報が侵害された状況であっても、独立した保護策が有効に機能することを示す事例であると指摘している。
AIインフラを標的とする「JADEPUFFER」の背景
JADEPUFFERは、セキュリティ企業Sysdigによって2026年7月に初めて報告された脅威アクターである。同グループは、大規模言語モデル(LLM)を用いて侵入から身代金要求までをエンドツーエンドで自律的に遂行したランサムウェア作戦を展開したことで知られている。
Sysdigの調査によると、同グループはAIアプリケーション開発ツールである「Langflow」の既知の脆弱性(CVE-2025-3248)を悪用して侵入していた。自律型エージェントが自身の意図を記録・出力しながら、認証情報の収集、横展開、永続性の確立、Nacos構成ファイルの暗号化、元データベースのテーブル削除を実行し、ビットコインを要求する身代金メモを残していたという。暗号化処理にはMySQL組み込みの暗号化関数が用いられていた。
さらにJADEPUFFERはその後、同一のLangflow環境に対して「ENCFORGE」と呼ばれるGo言語製の独自ランサムウェアを用いた再攻撃を行っていたことも判明している。ENCFORGEはAIインフラを標的とするように設計されており、モデルのチェックポイント、ベクトルデータベース、学習データセット、埋め込みインデックスなど約180種類のファイル拡張子のほか、macOS関連の各種ファイル(キーチェーンやXcodeプロジェクトなど)を探索して暗号化する特徴を持っていた。
今回のAzure環境に対する破壊活動について、Microsoftの研究チームは、同グループの攻撃手口がさらに発展していることを示す事例であると報告している。