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The Hacker News

レーザー照射で暗号資産ウォレット「Tangem」のパスワードがリセット可能に 競合Ledgerが指摘、修正は不可

要点

  • 暗号資産ウォレット「Tangem」のチップにレーザーを照射し、パスワードを任意の値にリセットできる脆弱性が発見された。

  • 攻撃の実行にはカードを物理的に切り開く必要があり、約25万ドルの設備と高度な技術が必要となる。

  • ファームウェアの更新が不可能な設計のため、すでに販売されたすべてのカードでこの脆弱性を修正するパッチは提供されない。

  • 脆弱性を指摘したLedgerに対し、Tangemは「ラボ環境でのみ可能な物理攻撃であり、実質的なリスクはほぼ皆無である」と反論している。

  • 暗号資産(仮想通貨)ハードウェアウォレットメーカーのTangem(タンジェム)が販売するカード型ウォレットについて、内部チップへ精密にレーザーを照射することで、パスワードを任意の値にリセットできる脆弱性が存在することが明らかになった。この攻撃手法は、競合企業Ledger(レジャー)のセキュリティ研究チーム「Donjon(ドンジョン)」によって発見され、2026年7月10日に公表された。パスワードがリセットされた場合、元のパスワードやバックアップ用のカードなしでウォレット内の暗号資産が第三者に移動させられる危険性がある。

カード型ウォレットのセキュリティと弱点

Tangemのウォレットは、スマートフォンと通信するキャッシュカード型のデバイスだ。内部にはセキュリティ評価基準「EAL6+(極めて厳格な安全基準)」を取得したサムスン電子製ICチップ「S3D232A」が搭載されている。これは機密情報を保管する「セキュアエレメント(安全な専用チップ)」で、暗号キーを外部へ漏洩させない設計を持つ。

通常、ウォレットの操作にはカードの所持とパスワードが必要だが、Ledgerのセキュリティチーム「Donjon」はパスワード再設定の機能に着目し、その処理プロセスに脆弱性を見出した。

レーザー故障注入によるパスワードリセットの仕組み

Tangemのカードは複数枚セットで販売され、パスワード忘却時は別カードを重ねて再設定する。その際、チップ内部でカードが「リカバリーモード」かを確認する単一のチェックが走る。

研究チームは、このチェックの瞬間にチップへレーザーを照射する「レーザー故障注入(動作中のチップにレーザーを当てて一時的な誤作動を起こす攻撃手法)」を試みた。レーザーにより回路が乱れてチェック処理が正常に機能しなくなると、バックアップカードがない状態でもリカバリーモードと誤認する。

この誤認状態に陥ると、カードは元のパスワードや追加カードによる認証なしで新しいパスワードを設定できる状態になる。この再設定機能をあらかじめオフに設定していても、チェック自体は内部で必ず実行されるため、攻撃を回避することは不可能とされる。

物理的な破壊を伴う攻撃と修正不可の背景

今回の攻撃の実行には、約25万ドルの設備や高度な技術が必要であり、カードを物理的に切り開くため明確な損傷が残る。しかし、一度条件を特定すれば攻撃はすべてのカードで再現可能で、1枚あたり約2時間でパスワードのリセットが完了したという。研究チームは2026年2月10日にこの問題をTangemへ報告している。

最大の問題は、外部からの遠隔書き換えを防ぐために「ファームウェア(機器を制御する基本ソフト)」の更新機能を排除した設計になっている点だ。この仕様が裏目となり、すでに販売されたカードの不具合を後から修正することは不可能となっている。

「実質的なリスクは皆無」とするTangemの主張

この発表に対し、Tangemは公式ブログで反論した。今回の手法は「高度なラボでのみ実行可能な物理攻撃」であり、特定の製品に限らない物理現象であると主張した。また、発見者が競合Ledgerのチームである点も指摘している。

さらに、カードに残高や個人情報は記録されておらず、高額な設備でカードを破壊しても残高が不明なため費用対効果が極めて低いと強調。これまでに同様の被害事例はなく、日常的な利用において「実質的なリスクはほぼ存在しない」と説明している。

他社製ウォレットにおける同様の物理攻撃

レーザー故障注入攻撃は今回が初ではない。2026年6月初旬、Trezor(トレザー)とそのチップパートナーのTropic Squareは、新型ウォレット「Trezor Safe 7」のチップ「TROPIC01」に対する同様の研究結果を公表した。この際もレーザーを用いてチップの署名チェックをバイパスし、独自のコードを実行できることが示されていた。

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