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Sakana AI

Sakana AI、AI研究のパイオニアであるシュミットフーバー氏を最高科学顧問に招聘――世界モデルと「フィジカルAI」開発を加速

要点

  • 「現代AIの父」として知られるユルゲン・シュミットフーバー博士が、Sakana AIのチーフ・サイエンティフィック・アドバイザーに就任した。

  • シュミットフーバー氏は現職を継続しながら、新設された研究組織「RSI Lab(再帰的自己改善ラボ)」の指導も担う。

  • 同社は同氏の理論を基盤に、物理世界で動作する「フィジカルAI」および事前シミュレーションを行う「世界モデル」の開発を本格化させる。

  • 自律的に研究やコード修正を繰り返すシステムの構築を目指すほか、日本へのトップ研究者誘致を進める。

  • AI開発を手がけるSakana AIは2026年9月24日、「現代AIの父」と称される著名な研究者のユルゲン・シュミットフーバー(Jürgen Schmidhuber)博士が、チーフ・サイエンティフィック・アドバイザー(最高科学顧問)として同社に正式参画したと発表した。シュミットフーバー氏は現職と兼任する形で就任し、同社が新たに立ち上げた研究組織「RSI Lab(Recursive Self-Improvement Lab:再帰的自己改善ラボ)」の運営にも携わる。同社はシュミットフーバー氏の知見を取り入れることで、従来の言語モデルを中心としたデジタル領域を超え、物理世界で機能する「フィジカルAI」や世界モデルの研究開発を推進する方針だ。

物理現象を予測・シミュレーションする「世界モデル」とフィジカルAI

Sakana AIは、人工知能の次のフロンティアはデジタルな画面の中にとどまらず、物理世界そのものへと拡張していく段階にあると説明している。同社によると、この変化に対応するためには従来の静的な大規模言語モデルだけに依存するのではなく、物理世界と直接相互作用できる「フィジカルAI」への転換が必要だという。

同社が開発を進めているのが、シュミットフーバー氏の基礎研究をベースとした「エージェントネイティブな世界モデル(Agent-Native World Models)」である。世界モデルとは、AIエージェントが実世界で行動を起こす前に、その行動がもたらす物理的な結果を安全に予測・シミュレーションする技術を指す。

この世界モデルに物理法則や物流(ロジスティクス)のルールを深く内在化させることで、次世代の産業製造を支える中核エンジンとして機能させる計画だ。実世界で莫大なコストがかかる試行錯誤を減らし、サプライチェーンの最適化やロボットの導入を仮想環境上で検証できるようにすることで、日本のものづくりの強みを再活性化させる狙いがあるとしている。

シュミットフーバー氏は今回の参画にあたり、日本がニューラルネットワークの基礎技術や高度なロボティクスを生み出してきた歴史に触れた上で、言語にとどまらないフィジカルAIと世界モデルの実現を通じて、物理宇宙を理解しシミュレートする自律システムの構築に貢献したいとコメントしている。

自律的に進化するシステムを目指す「RSI Lab」

シュミットフーバー氏が舵取りを支援する新設の「RSI Lab」では、機械知能の進化を加速させるための再帰的なサイクルを生み出すことを目指している。

この取り組みの基盤となっているのは、同氏が1987年の論文で提唱した「再帰的自己改善(Recursive Self-Improvement)」や、メタ学習(学習方法そのものを学習する技術)、および自己改善を行う理論的枠組みである「ゲーデルマシン(Gödel Machine)」などの先駆的な構想である。Sakana AIではすでに、科学研究を自動化する「The AI Scientist」や「Darwin Gödel Machine」といったプロジェクトにおいて、これらの概念を応用した成果を発表してきた。

RSI Labではこうした研究をさらに拡張し、AIシステム自身が自律的に研究や発見を行い、自らのコードを書き換えながら物理世界と相互作用する仕組みの確立を目指すとしている。

日本の技術史への敬意とグローバル人材の集約

Sakana AIは、世界的なAI人材の流出傾向を反転させ、東京を世界水準の研究開発拠点にすることを掲げている。シュミットフーバー氏は、今日のディープラーニングブームの基礎となった1991年の技術や世界モデルの創始者として知られるが、同時に日本の研究者が築いてきた理論的基盤を高く評価してきた人物でもある。

具体的には、1979年の「ネオコグニトロン」によって画像認識で広く使われる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の原型を築いた福島邦彦博士や、自己組織的なリカレントニューラルネットワークの一種であるホップフィールド・ネットワークに先駆的な研究を行った甘利俊一博士などの業績を長年支持してきたという。

シュミットフーバー氏は今後、定期的に東京を訪れてSakana AIのチームと共同研究を行うとともに、日本のAIエコシステム全体の支援にも携わる予定だ。同社は現在、世界モデルやフィジカルAIの開発を担う専門家を東京の研究拠点に向けて広く募っている。

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