Sakana AI、モデル連携基盤を進化させた「Fugu Max」と「Fugu Ultra v2」を発表――低コスト化と最高峰の性能を両立
要点
-
Sakana AIが、複数のAIモデルをタスクに応じて最適に協調動作させるオーケストレーション基盤の最新版「Fugu Max」と「Fugu Ultra v2」を発表した。
-
「Fugu Max」はオープンモデル群への動的ルーティングにより、大手フロンティアモデル比で出力コストを40〜60%削減しながら高い性能を実現した。
-
フラグシップの「Fugu Ultra v2」は、特定の商用最新モデルに依存することなく、視覚推論やソフトウェア開発ベンチマークで業界最高水準のスコアを記録した。
-
両モデルともOpenAI互換APIを通じて即日提供が開始されており、既存ユーザーは1行のパラメータ変更のみで移行できる。
-
AI開発を手がけるSakana AIは9月、複数のAIモデルを連携させて課題を解決するオーケストレーション技術の最新版として、「Fugu Max」および「Fugu Ultra v2」を発表した。同社は、単一の大規模モデルを巨大化させる従来のアプローチに対し、処理能力と運用コストの2軸を同時に最適化する手法を提示している。両モデルはすでにOpenAI互換APIを通じて提供が開始されている。
共通基盤から生まれた2つの特化アプローチ
今回発表された「Fugu Max」と「Fugu Ultra v2」は、別個のプロダクトではなく、同一のオーケストレーション(複数のAIモデルを統合・協調制御する技術)基盤を用いながら、異なる目的に応じて最適化されたシステムであると説明されている。
Fugu Maxは「最低限のコストで可能な限り高品質なアウトプットを出すこと」を目的とし、Fugu Ultra v2は「複雑で多段階にわたるタスクにおいて到達しうる最高峰の性能を引き出すこと」を目指して設計された。
圧倒的な低コストと処理能力を両立した「Fugu Max」
Fugu Maxは、入力されたタスクを解決可能な最も軽量なモデルへ動的に振り分ける仕組みを採用している。同システムでは、NVIDIAとの協業を通じて統合された「NVIDIA Nemotron」シリーズをはじめ、多数のオープンウェイトモデルやドメイン特化型モデル群をプールに組み込んでいる。
価格面では、入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり6ドルに設定された。これは「Sonnet 5」「GPT 5.6 Terra」「Kimi K3」といった主要モデルの出力価格と比較して40〜60%安価な水準だという。
性能面でも高い成果を示しており、Sakana AI独自のコーディング評価指標「SWEFish」をはじめ、「Terminal Bench 2.1」「GPQAD」「AA-LCR」「GDP.pdf」「AutomationBench」の計6つのベンチマークで総合トップスコアを獲得した。検証された10のベンチマーク中7つにおいて、従来の単一モデルによるコストパフォーマンスの限界線(パレートフロンティア:コストと性能の最適トレードオフ境界)を拡張したとしている。
商用独自モデルに依存せず最高峰の推論品質を達成する「Fugu Ultra v2」
フラグシップとなる「Fugu Ultra v2」は、複雑なマルチステップ推論や自律的な調査、フルスタックのソフトウェア開発など、生のアウトプット品質が最優先されるタスクに向けて設計された。
特に視覚データや構造化データが絡む高度な推論タスクにおいて強みを発揮するという。視覚的推論およびデータ解釈をテストするベンチマーク「Chartography」では48.3スコアを記録し、「Opus 5」(27.3)や「Fable 5」(29.5)を大きく上回った。また、ソフトウェア工学ベンチマーク「DeepSWE」においても74.3をマークし、トークン単価が3〜5倍高価なモデルを凌駕したと報告されている。
評価対象となった全8つのベンチマークのうち、「GDP.pdf」「Chartography」「SWEFish」「DeepSWE」「Toolathon」の5つで最高または同率首位を獲得し、7つのベンチマークで上位2位以内に入る安定性を見せた。
特筆すべき点として、Fugu Ultra v2の連携対象モデルプールには「Fable 5」「Fable 5.1」「GPT-6-Astra」といった最新の商用独自モデルが含まれていない(学習カットオフ日は2026年8月28日)。特定のプロプライエタリ(独占的・非公開)なモデルに依存せず、交換可能なオープンモデル群を束ねることで、ベンダーロックインやAPI停止、地政学的リスクへの耐性を担保していると説明している。
数カ月で進化を遂げたFuguの歩み
Sakana AIのFuguシリーズは、2026年4月にベータ版を公開して以来、短期間で進化を続けてきた。
- 4月(Beta): 複数エージェントの協調動作が単一基盤モデルとして機能することを実証。
- 6月(一般提供 & Fugu Ultra v1): 難関ベンチマークにおいて商用フロンティアモデルに匹敵する性能を確認。
- 7月(Fugu-Cyber & Claude Code Interface): サイバーセキュリティやコーディング環境など実務領域への特化連携を展開。
- 8月(Sakana Chat & NVIDIA連携): 日常利用向けチャットサービスへ拡張し、NVIDIA Nemotronオープンモデルの統合を開始。
- 9月(今回の発表): Fugu MaxおよびFugu Ultra v2を正式リリース。
同社は、オープンモデルの組み合わせによる協調動作こそが、単一の巨大モデルを超える価値を生み出すアプローチであると強調している。
提供形態と移行方法
Fugu MaxおよびFugu Ultra v2は、発表と同時にOpenAI互換APIを通じて即時利用可能となっている。
既存のFugu環境を利用しているユーザーであれば、大規模な移行作業を行う必要はなく、API呼び出し時のパラメータを1行変更するだけで新アーキテクチャへ更新できる。利用開始は同社の製品ページおよびコンソールサイトにて案内されている。