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Sakana AI

Sakana AIなど、立方体デバイスの連携で全体の形状を判別する集団知能システムを発表

要点

  • Sakana AIなどの共同研究グループは、個々の立方体デバイスが隣接機器との局所的な通信のみで全体の形状を判断するシステムを開発した。
  • 各デバイスは全体の位置情報を持たず、近接機器との情報伝達だけで物体の分類(飛行機やテーブルなど)を認識できる。
  • シミュレーションで訓練したモデルを物理デバイスに直接移植し、最大197個を用いた実験で100%の形状分類に成功した。
  • 一部のデバイスが故障して通信不能になった状態でも、システム全体で認識を維持する高い堅牢性を示した。

リード文

Sakana AIは2026年7月13日、コペンハーゲンIT大学およびAutodeskとの共同研究により、自律的な立方体型デバイスが隣接するデバイス同士の通信だけで全体の形状を認識するハードウェアシステム「Smart Cellular Bricks(スマート・セルラー・ブリックス)」を発表した。本研究成果をまとめた論文は、学術誌『Nature Communications』に受理された。

中央制御に頼らない「集団知能」を物理ハードウェアで実現

本研究は、全体を統制する中央コントローラーを必要とせず、シンプルな個々の要素が局所的なルールに基づいて通信することで頑健な挙動を生み出す「集団知能(collective intelligence)」の概念を物理的なハードウェアに適用した。

開発された「セルラー・ブリック」は、6つの面すべてに電気コネクタを備えた小型の立方体型プリント基板モジュールである。内部にはマイクロコントローラー、自己の形状予測を伝えるLED、電源回路が搭載されている。各モジュールは、自身が全体のどの位置にあるのか、また構築された物体が全体としてどのような形状なのかという「グローバルな情報」を一切持たない。物理的に接触している隣接モジュールとの間でのみデジタル通信を行い、情報の更新を繰り返すことで、集団全体としての形状の合意形成を図る。

3次元に拡張された「ニューラル・セルオートマトン」の学習

形状分類のアルゴリズムには、「Neural Cellular Automata(NCA:ニューラル・セルオートマトン)」のフレームワークを3次元に拡張して使用している。

NCAとは、格子状のセルが周囲の状況に応じて状態を変化させる計算モデル「セルオートマトン」の更新ルールを、深層学習モデルによって学習させる手法である。セルの状態を連続的な数値として扱うことで、勾配降下法(パラメータの最適化手法)を用いた効率的な学習を可能にしている。

各モジュールでは同一の小型ニューラルネットワークが動作しており、隣接モジュールからの入力と自己のメモリ状態から、積み上げられた物体が「飛行機、椅子、自動車、テーブル、家、ギター、ボート」のどれに該当するかを推測する。特定の形状そのものを一致させるのではなく、形状の「クラス(分類)」を認識させることで、個体ごとの形状のばらつきや差異に対しても高い許容度を持つという。

実機検証における高い分類精度と収束速度

研究グループは、500個以上のモジュールを用いたシミュレーションと、約200個の物理的なモジュールを用いた実機による実験を実施した。

シミュレーション上の検証では、形状の分類精度は98.97%に達した。このシミュレーションで学習を終えたNCAモデルを調整なしに直接物理ハードウェアへ移植し、26個のモジュールで組んだギターから、197個で組んだ丸テーブルまで4種類の形状を構築した。実験の結果、すべての形状において100%の成功率で正しいクラスの合意形成に成功した。実機での収束プロセスは60サイクル未満で完了し、現実の時間にして約3分間で正しく形状を判別できた。

障害に対する堅牢性と構造的な破損の検知

生物のように頑健性を評価するため、システムの一部が故障して通信できなくなった状況を物理ハードウェアで再現するテストが行われた。

モジュールの一部を無効化して送受信を遮断したところ、5%の故障率ではほとんどの形状で高い認識精度を維持し、飛行機やボートでは15%が故障しても精度低下は最小限だった。ただし、ギターのネック部分のように構造上の結合部分が細いボトルネック箇所で故障が発生した場合は、通信が遮断され合意形成に影響が出ることが確認された。

また、本システムは局所的な相互作用のみを用いて、モジュールの不足や不良による構造的な不整合(破損)を自動的に検出し、修復の手順を案内することも可能だという。

補足

生物の組織創発や自己修復機能に着想を得た今回のシステムは、将来的にスマート材料や、周囲の環境や用途に応じて自己変形する再構成ロボットなど、分散型の意思決定が不可欠な領域における応用が期待される。

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