Sakana AIと東京大学、テスト時計算量でロボット動作の精度を高める「SAIL」を発表 成功率が25%から73%に向上
要点
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Sakana AIと東京大学の研究チームが、ロボットの動作軌道生成手法「SAIL」を発表した。
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視覚と言語を扱う基盤モデル(VLM)が生成した動作軌道をシミュレータ内で検証し、映像のフィードバックをもとに修正する仕組みを採用した。
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シミュレーション上の6つの物体操作タスクにおいて、探索候補数を増やすことで成功率が25%から73%に向上したことが確認された。
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シミュレーションで選定された信頼性の高い軌道のみを実機ロボットへ送信して実行する。
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本研究成果は、ロボティクス分野の国際学会「IROS 2026」にて発表される予定となっている。
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AI研究開発企業のSakana AIは2026年9月28日、東京大学との共同研究によるロボット制御手法「SAIL(Scaling In-Context Imitation Learning)」を発表した。本手法は、ビジョン・言語モデル(VLM:画像と自然言語を統合して処理するAIモデル)を活用し、推論時の計算量を拡大することでロボット動作軌道の信頼性を向上させるアプローチである。本研究の成果は、ロボット工学の国際学会であるIROS 2026で発表される予定だという。
従来の課題:基盤モデルによる一発生成の不安定さ
ロボットに未知のタスクを習得させる従来の手法では、人間による多数の実演データ(デモンストレーション)を収集した上で、動作を決定するポリシー(制御ルール)を個別に学習させることが一般的であった。これに対し、膨大な画像やテキスト、ロボティクス関連データを事前学習した基盤モデルを活用することで、モデル自体のパラメータを再学習させることなく、その知識を引き出してロボット制御へ応用する試みが進められている。
先行研究や実証例では、「GPT-6 Astra」のような高度な基盤モデルが汎用的な言語・視覚認識能力と並行して物理ロボットを操作できることや、少数のデモンストレーションを与えるだけでLLMやVLMがロボットの一連の動作シーケンスを生成できることが示されていた。
しかし、基盤モデルを用いた場合でも、わずか1回の生成で常に信頼できるロボットの動作軌道を出力できるとは限らない点が課題となっていた。生成される軌道の精度は与えられた文脈情報に大きく左右され、動作の目標地点にわずかなズレが生じただけでもタスク全体が失敗に終わってしまうという不安定さがあったという。
SAILの仕組み:シミュレータ試行と2つのVLMによる改善サイクル
こうした課題に対し、研究チームはテスト時スケーリング(推論時により多くの計算資源を投入して回答の質を高める手法)をロボット軌道生成に応用する「SAIL」を提案した。SAILは、モデルを再学習させるのではなく、推論の段階でシミュレータとVLMを連携させた反復的な修正プロセスを導入している。
SAILのシステム内部では、役割の異なる2つのVLMが動作する。まず、動作生成を担当する「ポリシーVLM」が、少数の成功デモンストレーションを入力条件としてロボットの動作軌道を生成する。生成された軌道はすぐに実機へ送られるのではなく、まず仮想空間のシミュレータ内でテスト実行される。
続いて、レビューを担当する「評価VLM」がシミュレーション実行時の動画を確認し、動作のどの段階でタスクの進捗が滞ったか、どの部分で失敗が生じたかを詳細に特定する。ポリシーVLMはこの評価フィードバックを受け取り、指摘された問題箇所を修正した新たな軌道を再生成する。
MCTSによる探索と実機ロボットへの適用
軌道の修正と候補の選定には、モンテカルロ木探索(MCTS:複数の選択肢から有望な手順をシミュレーションして最適な手を探索するアルゴリズム)が組み込まれている。MCTSを用いることで、評価VLMからのフィードバックに基づいて有望な動作候補を洗練させながら、同時に代替となる別の動作案を幅広く探索することが可能になる。
この探索プロセスをシミュレーション上で繰り返した後、最終的に厳選された成功軌道のみが物理的な実機ロボットへと送信される。これにより、実機環境で危険な動作や失敗が発生するリスクを抑え、安全かつ確実な動作実行を実現している。
実験結果:候補数の増加により成功率が25%から73%へ改善
シミュレーション環境における6種類のマニピュレーションタスク(ロボットアーム等で物体を把持・移動させる操作タスク)を用いてSAILの性能評価が行われた。
実験の結果、探索予算(生成・検証する候補の数)を1つの候補から45候補へと拡大させたところ、成功する軌道を見つけ出せる平均確率が従来の25%から73%へと大幅に向上したことが明らかになった。また、研究チームはシミュレーション環境だけでなく、物理的な実機ロボットを用いた実環境での評価も実施したと報告している。
これらの結果から、ロボットの動作軌道生成においてもテスト時スケーリングが有効に機能し、追加の計算リソースを活用してシミュレーション内で動作案のテストと修正を重ねることが性能向上に寄与することが示されたとしている。
今後の展望
研究チームは、既存の基盤モデルが今回のような視覚的フィードバックループを通じてどこまで能力を発揮できるか、またシミュレーション上で得られた動作の改善が物理ロボットの実環境に対してどこまで忠実に反映されるかについて、今後もさらに解明すべき点があると言及している。