Sakana AIとNVIDIAが提携拡大、自律型オーケストレーター「Sakana Fugu」に「NVIDIA Nemotron」を統合へ
要点
- 日本のSakana AIと米NVIDIAは、オープンなAIモデルの革新を日本から世界へ発信するための協業拡大を発表した。
- Sakana AIのマルチエージェントオーケストレーションシステム「Sakana Fugu」に、NVIDIAのオープンモデルファミリー「NVIDIA Nemotron」が統合される。
- コーディングやツール呼び出しに強みを持つNemotronがFuguのエージェントプールに加わることで、対応可能なタスクの幅が広がる。
- 両社は共同で技術検証を行い、Fugu内でのNemotronの性能評価を通じて、モデルとオーケストレーション層の双方の継続的な改善を図る。
日本のAIスタートアップであるSakana AIは2026年7月15日(現地時間)、米NVIDIAとの協業を拡大することを発表した。この新たな提携により、NVIDIAのオープンモデルスタックから「NVIDIA Nemotron(ネモトロン)」を、Sakana AI独自のマルチエージェントオーケストレーションシステム「Sakana Fugu(サカナ・フグ)」へと統合する。両社は、単一のモデルを巨大化させるアプローチとは異なる、複数の専門モデルを協調させる「集合知(コレクティブ・インテリジェンス)」による新しいAIの進化パスを提示することを目指している。
自律的な調整を担う「Sakana Fugu」の設計
今回の提携の中心にあるのが、インテリジェンス・オーケストレーター(複数のAIエージェントやモデルを統合・制御してタスクを実行するシステム)として機能する「Sakana Fugu」である。
Fuguは、単一のインターフェースとAPI(ソフトウェア間で機能を連携させる仕組み)の背後で動作し、個別のタスクに応じて最適な基盤モデルやエージェントを動的に選択、調整、そして組み合わせる役割を担う。各モデルの強みを引き出して一つの回答へと合成するこの仕組みは、本質的にモジュール(交換可能な構成要素)化された設計となっている。
これにより、新しい高性能なモデルが登場した際には随時システムへ追加することができ、AIエコシステム全体の進歩を取り込みながら能力を向上させることが可能だ。また、特定の単一モデルの限界や利用可能性に縛られないため、システムとしての適応力やレジリエンス(環境の変化に対応し、稼働を維持する能力)も高められている。
なお、Fugu自体も、エージェントプール内にある様々なLLM(大規模言語モデル)や、再帰的に呼び出されるFugu自身のインスタンスを呼び出すように特別にトレーニングされた言語モデルである。初期の評価において、このオーケストレーションを基本としたアプローチは、業界をリードする最先端のフロンティアモデル(極めて大規模で高性能なクローズドAIモデル)と並ぶ強力な性能を示しており、モデルの協調がそれ自体で独立した強力なスケーリング手法になり得ることを示唆している。
NVIDIAの専門モデル「Nemotron」との統合
今回の連携強化の一環として、Sakana AIは「NVIDIA Nemotron」をFuguのプール内の専門エージェントとして組み込む。Nemotronは、オープンウェイト(開発に必要な学習済みの重みパラメータが公開されている形態)のモデルファミリーおよびツール群である。
Nemotronは、コーディング、ツール呼び出し、そして指示追従において際立った強みを持っており、Fuguが統括する他のオープンかつ専門的なモデル群と並んで、システムに新たな能力をもたらす。この取り組みは、オープンモデルを個別に単体で利用するよりも、エージェントシステム内でインテリジェントに協調させることで、より高い実用性を発揮できるという共通のアイデアを実証するものとなる。
本協業は、オープンモデル、オーケストレーション、そして実利用の間に強力な相乗効果を生み出すように設計されている。Fugu側はより多様で深いモデル能力へのアクセスが可能になり、NVIDIA側は複数ステップからなる自律的なワークフローにおいて自社モデルがどのように機能するかを評価できるようになる。また、開発者や企業にとっては、モデルやプロバイダーの選択肢が広がり、特定の企業へのロックイン(依存)を防ぐことにつながる。実世界での利用から得られるフィードバックにより、モデルとオーケストレーション層の両方が改善され、より洗練されたオープンAIシステムへの好循環が形成されるという。
両社代表が語る提携の意義
今回の発表に際し、両社のトップおよび責任者はそれぞれ以下のようにコメントを寄せている。
「NVIDIAと協力して、Nemotronのような主要なオープンウェイトモデルを組み込み、次世代のFuguオーケストレーションモデルを共に構築できることを楽しみにしています」
―― David Ha(Sakana AI 共同創業者兼CEO)
「オープンモデルは、各国が自国の言語、文化、政策を反映したAIを構築する力を与えます。NVIDIA NemotronをSakana Fuguに導入することで、開発者がより有能なAIシステムを構築できるよう支援し、オープンモデルとクローズドモデルがインテリジェントに調整されたときに何が可能になるかを示していきます」
―― Kari Briski(NVIDIA ジェネレーティブAI担当バイスプレジデント)
技術提携のロードマップと今後の見通し
協業の次のフェーズは、具体的な技術的取り組みから開始される。近日公開予定のFuguの次期バージョンにおいて、NVIDIA Nemotronが専門エージェントとして統合された後、両社の開発チームは共同でFugu内でのNemotronの挙動の観察と改善に着手する。
NVIDIAは、Nemotronの適用レシピや評価に関するベストプラクティスを提供し、Fuguがマルチエージェント環境下でNemotronから最大限の性能を引き出せるよう技術的に指導する。こうして得られた知見は、NemotronとFugu双方の将来的なバージョンアップへと還元される予定である。
AI業界では、オープンモデルの数と専門性が高まるにつれて、それらをいかに適切に評価し、現実のワークフローに組み込むかが重要性を増している。すべてのタスクや言語において万能な単一のモデルは存在し得ないため、多様なモデル群を実用的なシステムへと変えるオーケストレーション層が次世代のAI開発において重要な鍵となる。両社は、Sakana AIが日本から発信する集合知の試みと、NVIDIAのオープンモデルおよび高速コンピューティングプラットフォームを融合させ、複数のモデルが調和して機能する、よりオープンで適応性の高いAIの未来を形作っていくとしている。