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Sakana AI

セキュリティ特化の協調型AI「Fugu-Cyber」発表、Sakana AIが企業向けに提供開始

要点

  • Sakana AIが、サイバー防衛に特化した最新のオーケストレーションモデル「Fugu-Cyber」を発表した。

  • 複数の専門AIエージェントを協調させる仕組みにより、他社のセキュリティ特化型モデルに匹敵する性能を実現している。

  • 脆弱性検証や検知ルール作成のベンチマークにおいて、86.9%および72.1%の高い成功率を記録した。

  • 悪用を防ぐため、APIの利用開始には具体的な用途や連絡先の提出を伴う厳格な手動審査が義務付けられる。

  • 日本のAIスタートアップであるSakana AIは2026年7月21日、サイバーセキュリティの高度な業務に特化した新しいオーケストレーションモデル(複数のAIを制御する仕組み)「Fugu-Cyber(フグ・サイバー)」を発表した。同モデルは、既存の「Fugu」をベースにセキュリティ防衛用にカスタマイズされたもので、同日よりAPIエンドポイントを介した提供が開始されている。

自律する複数エージェントの動的連携

「Fugu-Cyber」の最大の特徴は、単一のAIモデルではなく、裏側で機能する複数の「エージェント(特定の作業を自動実行するプログラム)」が動的に連携するマルチエージェントシステムを採用している点にある。利用者が一つのAPI窓口に要求を送信すると、システムが内部で複数の専門エージェントを自律的に割り当てて調整し、複雑なマルチステップのセキュリティタスクを実行する。このアプローチにより、特定のAIベンダーの技術だけに依存する「シングルベンダー依存」を回避できる利点もある。

実際のサイバー防衛能力を測るテスト(ベンチマーク)において、Fugu-Cyberは高い実績を示した。ソースコードを解析して実際の脆弱性を検証する能力を評価する「CyberGym」では86.9%の成功率を記録。また、生の脅威インテリジェンス(サイバー攻撃の傾向や手法を分析した情報)を検知ルールに変換する能力を測定する「CTI-REALM」では72.1%の成功率を達成した。これらは、セキュリティ分野に特化したAnthropic社の「Mythos-Preview」や、他社の「GPT-5.5-Cyber」といった最高峰の競合モデルと同等の性能であると説明されている。

高性能モデルの「導入だけ」では解決しない現実

一方でSakana AIは、単に最先端のAIモデルを組織に導入するだけでは、現実の企業セキュリティの課題は解決しないと警鐘を鳴らす。

同社が指摘するのは、日本経済新聞の「日経デジタルガバナンス」のレポートでも取り上げられた大企業の導入実態だ。たとえ高度なサイバー機能を持つAIモデルであっても、自社の保有するソースコードと深く統合されていなかったり、組織内にセキュリティの専門知識を持つ人材がいなかったりすれば、現実の脆弱性を発見し修正することは困難であるという。

この指摘は、Sakana AIが国内の主要な企業や金融機関と共同でセキュリティ対策に取り組む中で得た知見とも一致している。実務におけるサイバー防衛を成功させるには、AIモデルの純粋な推論能力だけでなく、人間のセキュリティ専門家が持つ知見を組み合わせることが不可欠であるとしている。

誤検知を防ぐ「検証の枠組み」と企業支援

一般に、AIモデルを単独で稼働させると、正常なアクセスを攻撃と判定する「誤検知(正常なアクセスを攻撃と判定すること)」を回避することが難しい。本番のシステム環境で安全に運用するためには、AIの周囲を適切に制御する「ハーネス(検証や動作を管理する外枠のシステム)」が必要になる。

Fugu-Cyberの運用においてSakana AIは、AIが脆弱性を検知した際にそれが本当に作動するのかを検証するセキュリティ専用サブエージェントと、修正用プログラムの適用前に人が確認を行う「人間介在型(最終的な適用前に人間が判断を行うプロセス)」のワークフローを組み込んでいる。

この運用の架け橋となるのが、同社の「Applied Enterprise(応用エンタープライズ)チーム」だ。同チームは国内の大手機関と緊密に連携し、Fugu-Cyberを安全に本番環境へデプロイ(システムを利用可能な状態に配置すること)するための専用インフラやプロセスの構築を進めている。専門家の実務経験とFugu-Cyberの思考力を統合することで、実用に耐えうる自動脆弱性検証システムを実現するとしている。さらに、複数のモデルを組み合わせたこのシステムは、技術やデータを自国で管理する「AI主権(データや技術を自国で管理する考え方)」を支える仕組みとしても機能するという。

改訂された利用方針と手動審査による提供

機微な情報を扱う特性から、Fugu-Cyberのリリースには厳格な安全策が講じられている。攻撃目的の悪用を禁止する改訂版の利用許諾方針(Acceptable Usage Policy)が適用されており、利用者はこの基準を遵守する必要がある。

APIの料金体系は「Token Plan(トークンプラン)」が適用されるが、利用を開始するにはWebフォームからのアクセス申請が必要となる。申請者は具体的な想定事例や検証可能な連絡先情報を提示し、同社チームが手動で厳密な審査・承認を行って初めてアクセス権が与えられる体制となっている。同社は今後もパートナー企業と共にシステムの強化を進め、重要インフラの防御力を高めていく意向だ。

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