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The Hacker News

数百体のAIエージェントが悪用されたPaperCut攻撃、48カ国440件以上のシステムが侵害被害に

要点

  • 印刷管理ソフトウェア「PaperCut」の脆弱性を突く攻撃で、48カ国・395組織の440件を超えるインスタンスが侵害された。
  • 攻撃者はOpenAI CodexやDeepSeekなどのAIモデルを組み込んだ数百体のAIエージェントを動員し、エクスプロイト開発から攻撃実行までを自動化していた。
  • 初回侵入からドメイン管理者権限の掌握までわずか7分、本格展開後は26秒間で11組織を侵害するなど、前例のない攻撃スピードが確認された。
  • 攻撃者の最終目的は判明しておらず、侵入権限を売買するブローカーか、データ窃取やランサムウェア展開を狙う主体かは特定されていない。

リード文

印刷管理ソフトウェア「PaperCut」の脆弱性を標的とし、AIエージェントを大規模に連携させたサイバー攻撃が行われていたことが、セキュリティ企業Blackpoint CyberやGreyNoise、Arctic Wolfの調査によって2026年9月10日に明らかになった。ロシア語圏のサイバー攻撃者と推測される人物が、複数のAIモデルと公開攻撃ツールを組み合わせて数百体規模のエージェントを稼働させ、世界48カ国で440件を超えるシステムを侵害したという。

48カ国・395組織に広がる被害と標的の傾向

今回の攻撃キャンペーンでは、企業や教育機関で広く使われている印刷管理ソフトウェア「PaperCut MF/NG」が標的となった。GreyNoiseなどの報告によると、被害が確認されたのは世界48カ国に及ぶ395の組織で、合計440件以上のPaperCutインスタンスが侵害された。

主な標的となったのは、アメリカ、イギリス、フランス、スペイン、カナダ、ベルギー、ポルトガル、オーストラリア、ドイツ、スイスなどの教育セクターだという。攻撃者はロシア、中国、香港、タイ、イラン、ベネズエラ、インドネシア、パキスタン、バングラデシュなど特定28カ国の組織を攻撃対象から除外するよう設定していたものの、一部の組織ではその除外処理が機能せず、意図せず被害に遭った事例も観測されている。

脆弱性の連鎖とラボ環境でのAIエクスプロイト開発

攻撃に悪用されたのは、PaperCutに存在する「CVE-2026-81578」と「CVE-2026-82078」の2つの脆弱性だ。これらは認証バイパス(正規のログイン手順を経ずに侵入する手法)とリモートコード実行(遠隔地から標的サーバー上で不正なプログラムを実行する手法)を組み合わせた攻撃チェーンとして機能する。

セキュリティ各社は、攻撃の発信元としてIPアドレス「45.142.193[.]132」を特定した。このIPアドレスは2026年7月初旬から、Palo AltoやUbiquiti、Citrix、SonicWall、Proxmox VEといったインターネット公開機器の探索に用いられていたことが判明している。

攻撃者はまず自前でPaperCutとActive Directoryサーバーを含むテスト用のラボ環境を構築し、エクスプロイトの開発と動作検証を実施した。並行してインターネットスキャンサービス「Netlas.io」のAPIを利用して標的リストを作成し、自前の環境でリモートコード実行と認証情報の収集に成功した段階で、本番環境への攻撃へと移行したとされる。

数百体のAIエージェントと攻撃ツールの連携

本キャンペーンの特徴は、攻撃プロセスの多くにAIが深く組み込まれていた点にある。攻撃者はOpenAI CodexやDeepSeekといったAIモデルを活用した数百体ものAIエージェントを展開し、公開されているセキュリティツールと連携させて攻撃を仕掛けていた。

使用されたツールには、資格情報窃取ツールのMimikatzや、Active Directoryの権限関係を可視化するSharpHoundのほか、Certipy、Rubeus、Impacketなどが含まれる。Blackpoint Cyberの分析によると、攻撃者のインフラからは、脆弱性の調査やエクスプロイトのコード生成にとどまらず、標的のフィルタリング、攻撃失敗時のログ分析、コードの自動修正、そして再試行に至る一連のワークフローがAIによって自動化されていた形跡が確認された。

わずか数分で管理者権限に到達する攻撃スピード

AIエージェントの動員によって、攻撃実行の速度は大幅に加速した。GreyNoiseの分析によれば、攻撃者は何もない作業環境の立ち上げから4時間足らずで実際の被害組織に対する初のリモートコード実行を成功させた。さらにキャンペーンが本格化すると、わずか26秒間で少なくとも11の組織を侵害したという。

アメリカのある高校を標的とした攻撃では、最初の侵入からドメイン管理者権限(ネットワーク内の全端末やサーバーを制御可能な最高位権限)を完全に奪取するまでにかかった時間はわずか7分だった。ただし、ドメイン管理者権限の掌握まで至った組織は、確認された被害組織全体のうち12組織に留まっている。

侵入後の挙動と依然として不透明な最終目的

侵入後の活動としては、Windowsの重要設定が保存されたレジストリハイブの収集ツールや、侵入テストフレームワークMetasploit/Meterpreterに関連するJavaペイロードの配備が確認された。また、ホスト情報、ユーザー一覧、実行中プロセス、機密設定データを特定するコマンドの実行も観測されている。

現時点で、攻撃者の最終的な目的は特定されていない。Blackpoint CyberやGreyNoiseのアナリストは、標的ネットワークへの初期侵入経路を確保して他者に販売する「イニシャルアクセスブローカー」として活動している可能性と、自らデータを窃取したりランサムウェアを展開したりする目的でアクセス権を保持している可能性の両面から調査を続けている。

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