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AWS ML Blog

スポーツ用品大手デカトロン、需要予測の中核に時系列基盤モデル「Chronos-2」を採用 AWSの大規模環境で運用へ

要点

  • スポーツ用品世界大手のデカトロンが、需要予測システムのコアコンポーネントとして時系列基盤モデル「Chronos-2」を採用したことを発表した。

  • 同社は12週間の発注補充用と52週間の長期戦略用という2つの予測期間を対象に、世界各地域で毎週システムを実行している。

  • これまで活用していたDeepARやTFTなどのモデルでは、毎週のモデル再学習や新地域展開に伴う運用負荷が課題となっていた。

  • 過去約2年間・101回のローリングカットオフと最大3万9000商品の実データを用いた大規模ベンチマークを経て導入に至った。

  • スポーツ用品世界大手のデカトロン(Decathlon)が、需要予測システムの基幹コンポーネントとして時系列基盤モデル「Chronos-2」を採用したことが明らかになった。AWSが2026年8月28日に公開した機械学習公式ブログ(AWS ML Blog)において、デカトロンの開発担当者らとの共同記事として発表された。同社はAWSの大規模環境でChronos-2を稼働させ、世界各地のサプライチェーン運用を支えているという。

80以上のスポーツと数万点の商品を対象とする需要予測の要件

デカトロンは、全世界に10万人以上のチームメンバーと4億人以上のユーザーを抱える世界有数のスポーツ用品小売企業である。同社のサプライチェーン運用において需要予測は中核を担っており、世界中の各店舗に顧客が必要とする適切な商品を適切なタイミングで届けるために不可欠な役割を果たしている。

同社の需要予測における大きな特徴は、ビジネスの規模と取り扱う商品の多様性にある。80種類以上のスポーツにまたがる数万点の商品を展開しており、販売エリアも複数の大陸に及ぶ。商品ごとに需要の発生パターンは大きく異なり、例えばスキー用の手袋とサーフボードでは需要のシグナルが根本的に異なる。欠品による販売機会の損失や過剰在庫のリスクを回避するためには、これらすべての商品に対して高精度な予測を行う必要があるという。

同社の需要予測システムは、全商品の週間販売数量を2つの重要な予測期間(ホライズン)に基づいて算出している。1つ目は、購買計画担当者が製造パートナーへの商品発注に用いる12週間の「補充ウィンドウ」である。2つ目は、長期的な在庫予測や拠点のキャパシティ計画に用いられる52週間の「戦略的ホライズン」だ。システムはこれら両方の予測期間に対して毎週実行されている。

現在、この予測システムはヨーロッパ、インド、中国、東南アジア(SEA)、中南米(LATAM)を含む複数の供給ゾーンに展開されており、各ゾーンで最大2万5000点の商品をカバーしている。さらに近日中には、中東およびアフリカ地域への展開も予定されているという。

従来モデルの変遷と毎週の再学習に伴う運用の課題

デカトロンにおける需要予測システムは、これまで数年間にわたり段階的な技術進化を遂げてきた。

同社は2021年から2024年にかけて、2つの手法を組み合わせたハイブリッドアプローチを採用していた。1週目から16週目の短期予測ホライズンには、AWSが提供するリカレントニューラルネットワークベースの時系列予測アルゴリズム「Amazon SageMaker AI DeepAR」を使用し、17週目から52週目の長期予測ホライズンには統計的手法である「Holt-Winters(ホルト・ウィンターズ)指数平滑法」を組み合わせていた。この構成において、DeepARは直近のトレンド変化に適応させるため、毎週モデルを再学習させていた。

続いて2024年以降は、アテンション機構により複数の変数や長期的な時間依存関係を捉えるディープラーニングモデル「Temporal Fusion Transformer(TFT)」を共変量(covariates)とともに導入した。これにより、長期ホライズンにおける予測精度の向上が図られた。

これらの従来手法は一定の成果を上げていたものの、運用面での大きな負荷が伴っていたという。システムを安定して機能させるためには毎週の再学習が必要不可欠であり、新たな地域へシステムを展開する際にも追加のエンジニアリング作業が発生し、容易に規模を拡大できないという課題を抱えていた。そのためチームは、運用上の複雑さを抑えながら、より高い予測精度を実現できる新たなソリューションを求めていたと説明している。

実データを用いた大規模ベンチマークと「Chronos-2」の選定

そうした中で注目されたのが、時系列基盤モデル(TSFM:Time Series Foundation Models)の台頭であった。時系列基盤モデルとは、大規模な時系列データで事前学習され、特定ドメインのデータによる再学習なしで高精度な予測を行えるAIモデルを指す。しかし、これらの事前学習済みモデルがデカトロン特有の小売データセットにおいても実際に効果を発揮するかどうかを検証することが不可欠であった。

そこでデカトロンは、自社の実データを活用した大規模かつ厳密なベンチマークテストを設計した。複数の時系列基盤モデルを、同社の本番環境におけるベースラインモデルと比較検証する取り組みである。

このベンチマークは、2022年第48週から2024年第44週までの約2年間に及ぶ101回のローリングカットオフ(評価の基準時点を一定期間ずつずらして繰り返し検証する手法)を用いて実施された。評価規模はカットオフあたり約2万5000点のユニークな商品にのぼり、データセット全体では3万9000点に及ぶユニークな商品の時系列データが対象となった。

こうした厳密な検証作業を経て、デカトロンは需要予測スタックのコアコンポーネントとしてAmazonの「Chronos-2」を選定するに至ったとしている。

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