V7、企業知識をAIの記憶に変える「Context Graph」を構築——GPT-6 Astraで最難関クエリ正解率89%を達成
要点
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英スタートアップのV7は、企業内の散在した文書データを構造化し、AIエージェントが活用できるメモリ基盤「Context Graph」を開発した。
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タスクの難度に応じてOpenAIの複数モデルを使い分けており、最難関のグラフ検索テストにおいて「GPT-6 Astra」が89%の精度を記録した。
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大量処理向けの「GPT-5.6 Luna」採用により、従来の「GPT-5.4 mini」と比較して文書あたりの処理コストを78%削減した。
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金融機関の案件精査プロセスを21倍高速化し、保険金請求のエラーを13.5%削減するなど、現場業務で大幅な効率化を達成している。
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AIスタートアップの英V7(V7 Labs)が、社内文書に埋もれた文脈を整理し、AIエージェントが業務を実行するための構造化メモリを提供するプラットフォーム「V7 Go」の成果を公表した。米OpenAIが2026年9月21日付の公式ブログで事例として公開した。業務の背景情報を正確に把握する仕組みと最新のAIモデルを組み合わせることで、50〜100ステップに及ぶ複雑なワークフローを99.9%の精度で数分以内に完結させているという。
散在する企業データを構造化する「Context Graph」の仕組み
V7は2018年、アルベルト・リッツォーリ(Alberto Rizzoli)CEOとサイモン・エドワードソン(Simon Edwardsson)CTOによって設立された企業だ。同社が開発する「V7 Go」は、金融や保険、不動産などのミッションクリティカルな業務において、エージェントが文脈を理解して自律動作するためのプラットフォームである。
業務文書やデータルーム、表計算シート、メールなどに分散した情報は、AIエージェントにとって把握が難しい。リクエストのたびにエージェントが背景情報を再検索すると、時間とトークンを過度に消費し、情報の関連性を見落とす原因にもなる。
この課題に対し、V7 GoはSharePointやGoogle Driveなどの社内リポジトリに接続し、企業、ファンド、人物といったエンティティ(識別可能な対象)やその関係性、数値データを抽出して「Context Graph」と呼ばれるナレッジグラフ(情報を網の目状に関連付けた構造)を構築する。長大なコンテキスト全体を都度読み込む手法に比べて低コストかつ高速に探索できるほか、元のソース情報への引用証拠を保持する。グラフ内の情報で不足する場合は、RAG(検索拡張生成:外部文書を検索して回答を補完する仕組み)による元ドキュメントの検索も併用される。
企業システム間の情報検索ベンチマーク「HERB」において、V7の検索専用システムは公式ベースラインを69%上回り、回答不可能なクエリに対するハルシネーション(AIの事実誤認)を38%削減したという。
負荷に応じたモデル選定と「GPT-6 Astra」の活用
V7 Goは、ワークフローの処理ステップを「高速」「中庸」「高知能」の3段階に分類し、OpenAIのモデルを用途に応じて使い分けている。
数百万件規模のファイルから情報を抽出する大量処理には「GPT-5.6 Luna」が使用されている。従来の「GPT-5.4 mini」に比べて文書あたりのコストを78%削減し、精度を11.6ポイント向上させた。
高度な推論やツール操作が求められる複雑な指示には「GPT-5.6 Terra」や「GPT-5.6 Sol」を割り当てている。エドワードソンCTOによると、GPT-5.6 Solの導入によってツール呼び出しのエラー率は従来の「GPT-5.5」の2.7%から0.2%へと大幅に低下した。また、Chat Completions APIからResponses APIへの移行により、PDFを多用する一部ワークフローでトークン消費が約5%削減され、処理速度も最大50%向上したとしている。
さらに同社は、数千件の文書にまたがる難度の高い財務分析などのクエリに対して「GPT-6 Astra」の導入を開始した。実際の乱雑なデータを用いた独自の最高難度テストにおいて、GPT-5.6 Solの正解率78%に対し、GPT-6 Astraは89%の精度を達成したと報告している。
金融・保険分野における実業務の効率化
V7 Goが整理した文脈データは、すでに現場の定常業務で活用されている。長期間稼働するエージェントに対しては、直近のやり取りをモデルのアクティブコンテキストに保持しつつ、過去の知識はグラフから必要なときに呼び出す設計を採用している。
金融分野のプライベートエクイティ(未公開株)投資では、秘密保持対象の概要書面(CIM)から財務データやリスク項目を抽出し、スクリーニングメモを作成する作業が、従来の終日作業から15分へと短縮された(21倍の高速化)。また、別の金融サービスチームではレビュー時間を100時間以上から10時間未満に削減し、タスクあたり1万2,000ドルのコスト削減に成功したという。保険分野でも、過去の全請求履歴と保険ポリシーをエージェントに参照させることで、請求処理のエラー率を手作業基準比で13.5%削減した。
なお、V7 Goは外部ツールとの連携規格であるMCP(Model Context Protocol)サーバーを通じて、Context Graphの検索機能やデータ取り込み機能を提供している。すべての実行において監査可能な証跡を残すことで、意思決定の透明性を保ちながら業務の自動化を支援している。