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The Hacker News

偽のWeb3支援組織「Apex」、npmパッケージでAIツール装いマルウェア拡散と通信奪取

要点

  • 仮想通貨関連のスタートアップや開発者を標的とし、Web3アクセラレータを装って悪意あるnpmパッケージを配布するサイバー攻撃が確認された。

  • AIモデルの無料クレジットやセキュリティ監査ツールと偽り、macOS向けバックドアやWindows向け情報窃盗マルウェアに感染させていた。

  • 正規のコーディング支援ツールを改変し、AIモデルとの通信を攻撃者が管理するサーバー経由にリダイレクトする仕組みも組み込まれていた。

  • 攻撃者はSNSで多額の出資を持ちかけてツールの実行を促し、著名カンファレンスへの参加実績を騙って信用を演出していた。

  • 仮想通貨分野の新興企業や創業者を標的に、Web3のベンチャーキャピタルアクセラレータ(スタートアップ支援・投資組織)を偽装して悪意あるソフトウェアを配布するサイバー攻撃キャンペーンが明らかになった。米セキュリティ企業ElasticのElastic Security Labsに所属する研究者、ジア・ユー・チャン(Jia Yu Chan)氏とダニエル・ステパニック(Daniel Stepanic)氏が2026年10月19日に調査結果を公表した。この一連の攻撃活動は「REF8801」という識別記号で追跡されており、開発者向けパッケージを通じて端末を感染させるだけでなく、AIモデルとの通信トラフィックを奪取する工作も含まれていたという。

AIモデルの無料提供や監査ツールを装う手口

発表によると、攻撃グループは「Apex Accelerator」と名乗り、WindowsおよびmacOSの利用者を標的にした悪意あるnpm(JavaScript環境のパッケージ管理システム)パッケージを公開していた。

配布されていた代表的なパッケージは「@apexacc/cli」と「@apexacc/audit」の2種類だ。このうち「@apexacc/cli」は、Web3の創業者向けAIアドバイザーと銘打たれ、Anthropicの「Claude Fable 5」やGoogleの「Gemini 2.5 Flash」を搭載していると宣伝されていた。さらに、正規のAIコーディングエージェントのプログラムを改変したものが含まれており、ユーザーが送信するAIモデルへのリクエストを攻撃者が管理する外部サービスを経由して送信させる仕組みが仕込まれていたと研究者は指摘している。

一方の「@apexacc/audit」は、トークンや暗号資産ウォレット、スマートコントラクトを診断する18種類の監査ツールを備えたMCP(Model Context Protocol:AIと外部ツールを接続するプロトコル)サーバーを自称していた。しかし、これらをインストールしても宣伝通りの機能は動作せず、診断結果は捏造された架空の内容が出力されるだけであった。また、「@apexacc/cli」のスコアリングテストを実行しても、架空のプロジェクトに対する根拠のない評価結果が返される仕様になっていたという。

投資オファーと著名カンファレンス参加を騙るソーシャルエンジニアリング

攻撃者は開発者を騙すために、巧妙な接触手段と権威付けを行っていた。SNSのX(旧Twitter)上では、暗号資産ウォレットや市場情報分析ツールの開発者に対し、組織名義で直接メッセージを送信していたことが確認されている。

その際、「Apex Foundation」という組織を通じて23万5000ドルの出資や助成金、パートナーシップを提供するという提案を持ちかけていた。過去のアーカイブ記録によると、同組織のウェブサイトには「基準を満たさない場合でもベンチャーキャピタルや個人投資家に橋渡しを行う」といった記載が存在していた。攻撃者は投資に向けたデューデリジェンス(事前適格性審査)の名目で、標的の開発者に対して「@apexacc/cli」などのツールを実行するよう指示していた。

さらに、シンガポールで開催された暗号資産の大型カンファレンス「TOKEN2049」への参加実績や、過去にリアルイベントを開催したと主張することで、プロジェクトの正当性を演出していた。広く知られた業界イベントに姿を見せることで、周囲の警戒を解く狙いがあったとElasticの研究者は分析している。

多重のマルウェア感染と過去の活動痕跡

インストールされたnpmパッケージの本質的な役割は、利用者の端末にマルウェアを送り込むことであった。プラットフォームごとの実行ファイルは、プロジェクトが紐付けられていたGitHubのReleases機能からダウンロードされる仕組みだった。

macOS環境に対しては「CloudSyncD」と呼ばれるバックドアや、Appleの正規アプリを装った暗号化ローダー(com.apple.system.loader)が送り込まれていた。Windows環境に対しては、端末から認証情報などを盗み出し、メッセージングアプリ「Telegram」を介して攻撃者にデータを送信するカスタムメイドの情報窃盗マルウェア(インフォスティーラー)が投下されていた。

Elastic Security Labsによると、このキャンペーンは今回が初めてではない。2026年7月下旬にはセキュリティ企業のSafeDepが、同じ活動グループに紐付く複数のnpmパッケージ(「@apexfdn/apex」「@copilot-mcp/apex」「@apexfdn/copilot-mcp」)を検出していた。当時は情報窃盗マルウェア「Atomic Stealer(別名AMOS)」のmacOS版を配布していたことが報告されている。

関連するドメインとしては「apexaccs[.]org」や「apexfdn[.]xyz」などが2026年4月以降に確認されている。攻撃グループの具体的な身元は判明していないものの、ソースコードのコミット履歴にロシア語のコメントが含まれていたことが確認されている。ただし研究者は、この手がかりだけで攻撃者の所属や発祥国を確定することはできないと慎重な見方を示している。なお、悪用されたnpmパッケージや関連するGitHubリポジトリは、現在はアクセス不能となっている。

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