OWN NEWS GATHER
← 戻る
AWS ML Blog

Wood Mackenzie、Amazon Bedrock AgentCoreを採用した共有AIエージェント基盤「APEX」を構築

要点

  • エネルギー・天然資源調査大手のWood Mackenzieが、AWSの「Amazon Bedrock AgentCore」を基盤とした共通エージェントプラットフォーム「APEX」を構築した。
  • 社内におけるAIの概念実証(PoC)の88%が本番展開に至らないという課題を受け、各チームで重複していたインフラや認証、ガードレールの共通化を図った。
  • 単一のランタイムでオーケストレーションや可観測性、安全性を一括処理し、個別開発されていた3つの社内・社外向けアプリケーション基盤を統合した。
  • 統制画面「APEX Studio」やID認識型アクセス制御を備え、評価やガバナンスの課題を解決しながらマルチエージェント環境への拡張を進めている。

リード文

エネルギーおよび天然資源分野のリサーチ・コンサルティングを手がける英Wood Mackenzie(ウッドマッケンジー)が、AWSの「Amazon Bedrock AgentCore」を活用した全社共通のAIエージェント基盤「APEX」を構築したことが、2026年9月17日付のAWS公式ブログで明らかになった。各開発チームで個別に行われていたインフラ構築やガバナンス機能を一元化し、概念実証(PoC)から実運用への移行を加速させる狙いがある。社内向けアシスタントから顧客向けサービスまで、同一インフラ上でのセキュアな提供を実現しているという。

本文

AIエージェントの本番化を阻む「88%の壁」とインフラの重複

AIエージェントのプロトタイプ作成は短期間で行える一方、複数のユーザーが利用する本番環境へ移行する段階でエンジニアリングの負荷が急増する課題が指摘されている。同時実行制御やセッション分離、ID管理、状態の永続化、スケーリング、そして安全性を担保するガードレール(AIの不適切な出力や動作を防ぐ制御機能)といった仕組みを、開発チームごとにゼロから作り直すケースが多いためだ。

2026年初頭時点の業界調査によると、企業におけるAI実験は広く普及しているものの、単一の機能であってもエージェントを本番運用までスケールできている組織は約4分の1にとどまるという。Wood Mackenzie社内においても、AIのPoC(概念実証:技術やアイデアの実現可能性を検証する試作)の88%が本格展開に至っていなかったと報告されている。

調査会社の米Forresterは、エージェント運用の失敗原因について、一般的なプログラムの不具合よりも曖昧さや連携ミス、予測不能なシステム挙動に起因する割合が大きいと分析している。特に最大の障害として挙げられているのが「評価と可観測性(オブザーバビリティ:システムの挙動や内部状態を監視・追跡する仕組み)」の確保だ。非決定論的に動作するエージェントがいつ誤った判断を下すかを事前に正確に把握することは難しく、従来のリグレッションテストでは検知しきれないという。

さらに、問題を起こしたエージェントを即座に停止できないといったガバナンスやID管理の不安も根強く存在していた。これらの背景には、認証やメモリ管理、トレーシングの再実装がチームごとに行われ、特定のモデルがコードにハードコードされてプロバイダー変更時に大幅な改修を要するという、インフラの重複問題があった。

共通基盤「APEX」の構築とAmazon Bedrock AgentCoreの選定

Wood MackenzieではAPEXの立ち上げ以前、「Woody」「Lens AI」「ST Trading App」という3つのアプリケーションでそれぞれ独自のAIスタック構築が進んでいた。このままではインフラの重複投資が発生し、チーム間でメモリやツール、評価の仕組みを共有できない状態に陥るリスクを抱えていたという。

こうした課題を解決するため、同社は全社共有のエージェントプラットフォーム「APEX(Agentic Platform for Energy eXperience)」の構築に踏み切った。基盤となる技術には、任意のフレームワークやモデルを用いてエージェントの構築・接続・最適化を大規模に行える「Amazon Bedrock AgentCore」が選定された。

選定にあたっては、自社ホスト型(セルフホスト)のソリューションと比較検討が実施された。具体的には、ホスティング形態、コスト構造、特定モデルに依存しない柔軟性(モデル非依存)、スケーラビリティ、ガバナンス機能、およびエンタープライズ向けのサポート体制といった要件が評価基準となったと説明されている。

「APEX Studio」による一元管理とセキュアな社内外展開

APEXでは、エージェントのオーケストレーション、安全性、可観測性、ID管理、外部連携などの共通機能を単一のランタイムが集約して処理する。これにより、各開発チームは基盤構築に煩わされることなく、製品の差別化につながるビジネスロジックの開発に専念できる環境が整った。

運用面では、プラットフォーム全体を集中管理するためのコントロールプレーン(管理統制機能)として「APEX Studio」が提供されている。各チームはAPEX Studioを通じてエージェントの稼働状態を運用・監視することが可能となっている。

また、ID認識型アクセス権限(identity-aware entitlements)の仕組みを導入したことで、社内向けツールである「Woody」と、外部顧客向けサービスである「Lens」の双方向に対して、同一のインフラストラクチャから対話型AI機能を提供できるようになった。

Wood Mackenzieは、エージェント導入の障壁となっていた評価と統制のギャップを埋めることで、マルチエージェントシステムが標準となる将来を見据えたプラットフォームの拡張を今後も進めていくとしている。

元URL