印刷管理ソフト「PaperCut」、悪用が続く2件の脆弱性に対処する正式メンテナンスリリースを公開
要点
-
印刷管理ソフトウェアを手がけるPaperCut社が、現在悪用が確認されている2件の脆弱性を修正する定期メンテナンスリリース(PaperCut NG/MF 26.0.5、25.0.13、24.1.10)を公開した。
-
今回のリリースは暫定的な緊急パッチを置き換えるもので、完全な品質保証テストを経ており、不具合修正やセキュリティ強化が含まれている。
-
対象となる脆弱性(CVE-2026-81578、CVE-2026-82078)は、認証の回避および任意のコード実行を可能にする深刻な欠陥である。
-
セキュリティ企業の調査では、ロシア語圏とみられる攻撃者がAIエージェント群を動員し、教育機関を中心に48カ国395以上の組織へ侵入したことが報告されている。
-
同社は緊急パッチを適用済みのユーザーに対しても、今回公開された正式なメンテナンスリリースへの移行を強く呼びかけている。
-
印刷管理ソフトウェアを開発するPaperCut社は木曜日、現在活発に悪用されている2件のセキュリティ脆弱性に対処するため、新たな定期メンテナンスリリースを公開した。対象となるのは「PaperCut NG」および「PaperCut MF」の各サポートバージョンであり、これまで暫定的に配布されていたすべての緊急パッチを置き換える形となる。同社は、標準的な検証プロセスを経た修正版のダウンロード提供を開始し、対象ユーザーに対して速やかなアップデートを推奨している。
正式な品質保証テストを完了したメンテナンスリリースの提供
今回PaperCut社から公開されたのは、「PaperCut NG」および「PaperCut MF」のバージョン26.0.5、25.0.13、24.1.10の各アップデート版だ。これらは同社が「Regular Maintenance Releases(定期メンテナンスリリース)」と位置づけるもので、完全な品質保証(QA)テストを通過した上で提供されている。
同社によると、このリリースにはこれまでに緊急措置として配布されていた「Emergency Patch Release 1」「2」「3」のすべてのセキュリティ修正が含まれているという。さらに、標準のリリース検証プロセスを通過したことに加え、システムの安全性を高める追加のセキュリティ強化(ハーデニング)が施されている。
今回のメンテナンスリリースは、悪用が確認されていた2件の脆弱性への対応だけでなく、過去の緊急パッチ適用に伴って生じていた2件のリグレッション(アップデートによって以前の機能が損なわれる不具合)の修正も網羅している。また、複数の脆弱性を連鎖させて侵入を図る「攻撃チェーン」に対抗するための各種緩和策や防御の強化も実装された。
認証回避とコード実行を許す2件の深刻な脆弱性
今回の修正対象となったのは、「CVE-2026-81578」および「CVE-2026-82078」として識別される2件のセキュリティ脆弱性だ。
これらの脆弱性は、影響を受けるシステムにおいて外部の攻撃者が正規の認証を回避し、リモートから任意のコードを実行(悪意あるプログラムを遠隔から送り込んで実行させること)することを可能にする。現在、実際の運用環境においてこの2つの欠陥を組み合わせた悪用行為が野外で確認されており、深刻な脅威となっている。
AIエージェントを駆使した大規模な侵入活動
セキュリティ企業のGreyNoiseとBlackpoint Cyberが明らかにした調査結果によると、ロシア語圏の脅威アクター(サイバー攻撃を行う主体)と疑われる攻撃者が、これら2件の脆弱性を悪用して大規模な不正侵入を行っていたことが判明している。
被害は48カ国にわたる少なくとも395の組織で確認されており、その多くは米国の教育セクターに集中していたという。この攻撃活動では、OpenAIのCodexハーネスとDeepSeekモデルによって制御される数百もの「AIエージェント」が動員され、広範囲な組織を対象に自動化された攻撃が展開されていた。
一方で、この攻撃者は特定の地域を意図的に除外していたことも確認されている。ロシア、中国、香港、タイ、イランをはじめとする28カ国の組織やエンティティは攻撃対象から回避されていた。一連の不審な活動は、IPアドレス「45.142.193[.]132」から発信されていたことが特定されている。
GreyNoiseは攻撃者の狙いについて、「この脅威アクターが、他の提携アクターへ引き渡すための初期侵入経路の構築のみを目的としているのか、あるいは自ら獲得したアクセス権を直接利用してデータ窃盗やランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求する不正プログラム)の展開といった後続の目的を達成しようとしているのかは不明だ」と分析している。
緊急パッチ適用環境からも正式版への移行を推奨
脆弱性を狙った活発な悪用が続いている状況を踏まえ、安全を確保するためには最新の修正を適用することが不可欠となる。PaperCut社は、すでに暫定版である緊急パッチビルドを導入している顧客に対しても、そのまま放置せず、今回提供が開始された正式なメンテナンスリリース版へ移行するよう強く求めている。