英国王立協会の学術誌が「世界モデル」特集号を公開、Sakana AIのCEOらがAIと生命の知能を論じる
要点
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1665年創刊の学術誌『Philosophical Transactions of the Royal Society A』にて、世界モデルをテーマにした特集号が公開された。
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AI、生物学、哲学の専門家が寄稿しており、Sakana AIのCEOであるDavid Ha氏も巻頭記事の共著者として参加している。
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現在の大規模モデルに見られる言語パターンの記憶と物事の因果理解の違いが指摘され、計算資源の拡大だけでは解決しない可能性が示されている。
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AIが自身の内部状態を予測する仕組みや、ロボットなど身体性を持つAIにおける状態把握の重要性が論じられている。
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生物のように環境へ働きかけて学ぶアプローチを通じて、AI研究が人工生命(ALife)研究へ接近していく展望が語られている。
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英国王立協会が発行する科学誌『Philosophical Transactions of the Royal Society A』において、世界モデルをテーマとする特集号「World Models in Natural and Artificial Intelligence」が公開された。AI開発を手がけるSakana AIが2026年9月12日付で伝えたもので、同社CEOのDavid Ha氏も寄稿者の一人として参画している。特集号では、近年のAIの進展を踏まえつつ、自然知能と人工知能における「世界モデル」の役割や課題について多角的な議論が展開されている。
歴史ある学術誌で組まれた「世界モデル」特集
今回特集号を発行した『Philosophical Transactions of the Royal Society A』は、1665年に創刊された世界最古の科学誌として知られる。本号では「World Models in Natural and Artificial Intelligence(自然知能および人工知能における世界モデル)」と題し、AI領域のみならず生物学や哲学の第一線で活動する研究者陣が寄稿を行った。
中心テーマとなっている「世界モデル(World Model)」とは、生物やAIが外部環境の情報を内部に写し取り、次に生じる事象を予測しながら行動を決定するための基盤となる概念を指す。近年、人間並みの知能を持つとされるAGI(汎用人工知能)の実現をめぐる議論が盛んになるなかで、この世界モデルが知能の本質を読み解く重要な鍵として位置づけられている。
単なるパターン記憶と「因果関係の理解」における差異
特集内で提示されている主要な論点のひとつが、AIが実行できるタスクの多さと、実際の理解との間にある乖離である。
現在広く利用されている大規模なAIモデルは多様な処理を行えるものの、それは入力された言葉の並びやパターンを学習した結果にとどまり、事象の背後にある因果関係を真に理解しているとは限らないという見解が示されている。研究者の間では、単に計算資源(コンピュートリソース)を増強していくだけでは、この「できること」と「わかっていること」の間にある根本的な差を埋めることは難しいとの指摘もなされている。
自己状態を予測するAIと身体性の獲得
もうひとつの論点として挙げられているのが、AI自身が自らの状態を捉える能力についての考察である。
AIに対して自分自身の内部状態を予測するような学習を施すことで、内部表現が整理され、処理の無駄が削減されることが示されているという。特にロボットなど、物理的な身体を持って動作するAIにおいては、自らの状態を正確に把握する能力が不可欠とされる。周囲の状況に応じて適切に動作を変更・適応させるための基盤として、自己の状態認識が重要な役割を果たすと説明されている。
人工生命(ALife)への接近と能動的な環境学習
特集号ではさらに、世界モデルの概念を生命の仕組みと結びつける視点も提示されている。世界モデルは外部環境だけでなく、その環境の中に存在する自分自身を捉えるための仕組みでもあるという。
生物は与えられた受動的な情報を受け取るだけでなく、自ら周囲の環境へ働きかけを行うプロセスを通じて世界を学んでいく。こうした学習のあり方を踏まえ、今後のAI研究は人工生命(ALife)の研究分野へと一段と接近していく可能性があると論じられている。
物理世界を理解するAIに向けた研究の展望
言葉を処理できる能力と、実世界を構造的に理解できる能力の間には依然として隔たりが存在するとされている。Sakana AIは、同社が設置する「RSI Lab」において、世界モデルおよび物理世界で機能する「Physical AI」の研究を進めており、今回提起されたような課題の解決に向けて取り組みを継続していく姿勢を示している。