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AWS ML Blog

英OneAdvanced、英国内にデータを閉じたAWS環境で50以上のAIエージェントを展開 SageMaker上のLlama 4セルフホストで実現

要点

  • 英国の大手エンタープライズSaaS企業OneAdvancedが、英国内のデータ主権を維持しながら50以上のAIエージェントを自社AWS環境上にデプロイした。
  • 医療や法務など厳格な規制を受ける顧客向けに、データを国外へ出さない完全な国内完結型のアーキテクチャを構築した。
  • 当時UKリージョンのマネージドサービスで未提供だった「Llama 4 Maverick」と「Llama Guard 4」をAmazon SageMaker AI上でセルフホストする手法を採用した。
  • Amazon Aurora PostgreSQL(pgvector)によるRAGやStrands Agents SDKによるオーケストレーションを組み合わせ、AIガバナンスの国際規格「ISO 42001」認証を支援している。

英国のエンタープライズ向けソフトウェアプロバイダーOneAdvancedが、データ主権要件を満たすためにAWS環境上で50以上のAIエージェントを自社運用体制で構築・展開したことが明らかになった。AWS公式の機械学習ブログが2026年8月12日に同社との共同記事として公開した。機密データを扱う規制産業の顧客要件に応えるため、オープンウェイトLLMを自社管理下のインフラでセルフホストするアーキテクチャを採用したという。

医療・法務など規制産業におけるデータ主権の壁

OneAdvancedは、1万社を超える顧客を抱える英国拠点のSaaSプロバイダーである。同社がシステムを提供する先には、患者の診療記録を扱う医療機関や事件記録を扱う法律事務所、コンプライアンス関連文書を扱う組織など、高度に規制された業界が多数含まれている。これらの組織では、AIツールを導入する際にも厳格なデータ所在(データレジデンシー)やセキュリティ、プライバシー基準を満たすことが強く求められていた。

同社のCTOであるAndrew Henderson氏は、英国におけるデータ主権は公共部門や規制産業の顧客にとって必須要件であり、データがどこにあり、誰がアクセス権を持ち、英国の法規制の枠組み内に収まっているかを把握することが完全なコンプライアンスと信頼の基盤になると説明している。

同社は当初、AWSのフルマネージド生成AIサービスであるAmazon Bedrockを用いた2週間のスプリントでプロトタイプを開発していた。この検証では、チャット応答をはじめ、英国の制定法を検索するBedrock Agent、データウェアハウスSnowflakeとの連携、グラフ自動生成などの機能を迅速に実現できたという。しかし、英国内にデータを完全に留めるという厳格な主権要件を満たすためには、すべてのモデルを英国リージョンにある自社AWSアカウント内でのみホストする必要があった。

SageMaker AIによるオープンウェイトLLMのセルフホスト

プロジェクト当時、OneAdvancedが採用を希望していた大規模言語モデル「Llama 4 Maverick」および安全対策用のコンテンツモデレーションモデル「Llama Guard 4」は、UKリージョンのマネージドサービス経由では提供されていなかった。

そこで同社は方針を転換し、自社で完全に制御可能なAWSインフラ上でオープンウェイトLLM(重み情報が公開されたモデル)を直接セルフホストするアプローチを選択した。これにより、Amazon SageMaker AI上にLlama 4 MaverickとLlama Guard 4を独自にデプロイし、推論処理とスケーリングを自社アカウント内で完結させる基盤を整えた。

このセルフホスト環境の構築にあたっては、モデルのホスティングだけでなく、安全性を担保するコンテンツモデレーション、文書検索システム、エージェントのオーケストレーション(連携制御)、さらには非技術者向けのノーコード・エージェント構築ツールまでを含めた本番水準の統合ソリューションが設計された。

4つの構成要素からなるソリューションアーキテクチャ

OneAdvancedが構築したAIソリューションは、主に以下の技術要素を組み合わせて実現されている。

  1. モデル実行基盤(Amazon SageMaker AI)
    Llama 4 MaverickおよびLlama Guard 4を自社管理下でホストし、外部リージョンへのデータ送信を発生させずにモデル推論を実行する。

  2. RAG(検索拡張生成)パイプライン
    社内文書や関連法令などの外部データを参照して回答を生成する仕組みとして、ベクトル検索拡張機能「pgvector」を有効化した「Amazon Aurora PostgreSQL-Compatible Edition」を採用している。

  3. マルチエージェント基盤(Strands Agents SDK)
    50を超える特化型AIエージェントの制御・協調には、オープンソースの「Strands Agents SDK」が用いられている。業務目的に応じて細分化されたエージェント群がタスクを分担する。

  4. ツール実行レイヤー(Amazon ECS)
    エージェントが外部APIやデータソースと通信して処理を実行するためのツール実行層は、コンテナ管理サービス「Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS)」上で稼働している。

また、開発者以外のスタッフでも業務に合わせたエージェントを容易に作成・調整できるよう、ノーコードのエージェントビルダー機能も組み込まれた。

完全な制御とAIガバナンス規格への準拠

この構成により、OneAdvancedはデータが英国の法域外に流出しない完全なUKデータ主権を確立した。同時に、インフラとモデル提供基盤のすべてを自社で完全に管理できる体制を整えたことで、AIマネジメントシステムの国際規格である「ISO 42001」の認証取得やガバナンス要件の充足にも寄与しているという。

マネージドサービスのリージョン展開を待つのではなく、オープンウェイトモデルとクラウドインフラを組み合わせて自社ホストする手法により、厳格な法規制環境下でも迅速なAIエージェントの展開が可能となった事例として紹介されている。

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