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The Hacker News

中国発のAI侵入テストツールが悪用、韓国の金融機関でデータ流出被害が判明

要点

  • 韓国の新韓銀行やイェガラム貯蓄銀行など複数の金融機関がサイバー攻撃を受け、データが外部へ流出したことが判明した。

  • 攻撃には中国の開発者が公開した自律型AI侵入テストツール「ARTEX」や複数の大規模言語モデル(LLM)が悪用されていた。

  • 米セキュリティ企業CrowdStrikeが、香港のサーバー上に露出していた設定ファイルやAIの対話ログから攻撃の実態を特定した。

  • ツールの悪用を受け、ARTEXの開発者はプロジェクトを非公開化し、今後の更新やサポートを停止すると発表した。

  • 同時期にはポルトガル語圏の攻撃者グループがAIを用いてアカウント乗っ取りを自動化していた事例も報告されている。

  • 韓国の金融機関を標的としたサイバー攻撃が発生し、侵入テスト用のAIツールが悪用されていたことが明らかになった。米セキュリティ企業CrowdStrike(クラウドストライク)が2026年10月に公表した調査結果によると、中国で開発された自律型ペネトレーションテストツール「ARTEX」を用いた攻撃により、複数の韓国金融機関から情報が流出したという。被害の判明を受けて、韓国の金融当局は警戒を呼びかけている。

香港の露出サーバーから発覚した攻撃インフラ

CrowdStrikeのインテリジェンス部門によると、今回の一連の攻撃活動は2026年9月下旬から10月上旬にかけて確認された。新韓銀行(Shinhan Bank)やイェガラム貯蓄銀行(Yegaram Savings Bank)を含む韓国拠点の金融機関が標的となり、データの抜き取り被害が発生したとされる。

この事案が発覚した契機は、香港拠点のIPアドレス上で設定不備により公開状態となっていたディレクトリの発見だった。そこにはコーディング支援AIツール「Claude Code」のセッション履歴やメモリファイル、さらにはARTEXの設定ファイルがそのまま残されていたという。

解析の結果、攻撃者は2台のサーバーを用いたアーキテクチャを構築していたことが判明した。香港のIPアドレスが攻撃キャンペーンの中核(バックボーン)として機能し、別のIPアドレス「38.244.50[.]120」に配置されたARTEXのインスタンスが韓国の金融機関への攻撃を実行していたと報告されている。

複数LLMを組み合わせた自律型侵入システム「ARTEX」

攻撃に用いられたARTEXは、中国の開発者「Autumn-27」が開発したオープンソースのマルチエージェント型自律侵入テストシステムである。ペネトレーションテスト(システムの脆弱性を検証するために擬似的な攻撃を行うテスト)を自律的に遂行する機能を持つ。

侵害に利用されたインスタンスでは、中核となるLLMバックエンドに「DeepSeek v4.1-flash」が採用されていた。さらにこれを補完するモデルとして、Z.aiの「GLM-5.3」およびSpaceXAIの「Grok 4.6」が組み合わされていた。攻撃者は、LLM APIのリセラー(再販業者)である「xcai[.]pro」を経由してDeepSeekを利用していたとみられている。

生成AIに対話でデータ売却先を相談、浮上した特定アカウント

露出していたClaude Codeのログからは、攻撃者の手口や動機をうかがわせるやり取りも見つかっている。攻撃者はツールの実行だけでなく、Claudeに対して「通常、攻撃者は韓国の漏洩データをどこで売却しているのか」と尋ねたり、韓国関連のデータ売買が行われているTelegramグループの探索を支援させようとしたりしていたという。

また、セッション内のプロンプトには「@YY520CN」というTelegramアカウント名や「YY」という呼称への言及が含まれていた。Telegram上のNFTギフトマーケットプレイスに対する脆弱性調査のセッションでも同じユーザー名が確認されている。CrowdStrikeは、この個人情報が攻撃者自身のものである可能性が高いとしつつも、現時点で得られている情報だけでは確定的な帰属の特定には至らないと結論づけている。

一方、言及されたTelegramアカウント「@YY520CN」は2026年10月8日、自身のチャンネル上で「自分は何もしていない。韓国側は原因が特定できない事象の責任を、自分のような罪のない一般人に押し付けようとしている」と投稿し、関与を否定した。

韓国の金融委員会(FSC)および金融監督院(FSS)は、今回の流出データに起因するフィッシング攻撃や不正融資詐欺に対して警戒を強めるよう、金融サービスの利用者に向けて注意喚起を出している。

悪用を受けた開発者はコードを非公開化

ツールの悪用が明るみに出たことを受け、開発元のAutumn-27はARTEXのクローズドソース化を発表した。開発者は声明の中で、今回の悪質な攻撃は自身とは一切無関係であり、ツールの本来の趣旨に反する行為であると強調している。

開発者によると、ARTEXは本来、正規の認可を受けた資産の範囲内でセキュリティリスクを検証し、防御能力を高めるための研究・学習目的で設計されたものだったという。しかし、ツールの悪用という現実を受け、プロジェクトの更新を終了して非公開に移行し、今後は新規バージョンの公開やメンテナンスサポートも行わないとしている。

AI悪用でアカウント乗っ取りを自動化する「SCARLET LOOP」も確認

今回の報告と並行して、セキュリティ企業のZenoXはポルトガル語圏の脅威アクター「SCARLET LOOP」による攻撃事例を公表している。このグループは、不正入手した認証情報を用いて不正ログインを試みるクレデンシャルスタッフィングとアカウント乗っ取りを自動化するAIプラットフォームを運用していたという。

この手口は標的の選定からログイン成功情報の窃取までを全自動で完結させるもので、以下の4段階で進行する。

  1. 標的の探索と選別: AI分類器を用い、ブラジルのロイヤルティプログラムや社内インセンティブ、ギフトカード関連など高価値なプラットフォームを特定する
  2. 認証情報の取得: 情報窃取マルウェアのログや過去のデータ漏洩から、標的ごとに合致する資格情報を収集する
  3. ログインの実行: 自動化検知を回避するアンチディテクションブラウザを備えたAIエージェントを使い、ログイン試行を行う
  4. 資格情報の持ち出し: ログインに成功したアカウント情報を特定の形式でプライベートなTelegramチャンネルへ送信する

この攻撃基盤では、検索クエリの生成にOpenAIの「GPT-5.6」が利用されていたと報告されている。

補足

サイバーセキュリティ分野において、防衛側が検証用に公開したオープンソースのテストツールやモデルが、攻撃者によって攻撃インフラへ転用される事例は以前から課題となっている。

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